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「オッペンハイマー」IMAX鑑賞。 [映画]



さていよいよノーランの本領発揮、
IMAXで鑑賞しようと入場までベンチで待っていたら、
なにか見覚えのある顔が視界を横切る。
息子さんらしき人と連れ立った高橋源一郎さん?
あれはもしや高橋源一郎さん?
鎌倉にお住まいだからここに来てもおかしくない。
いや、普通は横浜方面に行くだろうけど、
横浜駅前ではDolbyシネマ公開だし、
もしかしたらこっちのIMAXを見に来たのか?
勝手に@オッペンハイマー」を見に来たと思った。
ちょっと後を追いかけて「うむ」。
トイレに行って一旦落ち着いて、
あ、やっぱり源ちゃんだ!と思ってお声がけ。
やはりオッペンハイマー」鑑賞でした。

てなわけで、
映画を観る前からテンションマックスw。

今回ものすごく感じたのは、
オッペンハイマーという人はあくまで理論物理学者であり、
あくまでも各々の才能をまとめ上げたに過ぎないということ。
そしてその理論では、
もしかしたら世界を滅ぼす可能性すら予見していた。
それでも彼が止まらなかったのは、
自らの理論を証明せずにはいられなかった学者根性。
そして様々な部分で認められながらも、
圧倒的な賞賛が得られる軍から舞い込んだとんでもない規模の仕事。
でもその結果は彼が予想した以上のものであり、
彼は自分達の作り出したものがもたらした結果から目をそらし、
世界を焼き尽くさないまでも、
広島、長崎の人々と土地を焼き尽くし、
その結果彼のその後の人生は、
プロメテウスよろしく拷問にさらされる。
彼は自分の欲望と良心に従った。
ドイツが降伏して日本に投下するとなった時も、
「必要ない」「やるべきではない」という声もわかっていたが、
学者としてリーダーとして、
作り出したものの結果を見ずにはいられなかった。
それが一生涯彼を悩ませることになっても。
テラーの提唱する水爆に強固に反対したことは、
同じ理論物理学者であるテラーの実績を疎外するものでもあり、
おそらくは恨まれて憎まれもしただろう。
二度目の公聴会と聞き取り調査はやはり疲れた。
一言一句聴き逃すまいとする気持ちと同時に、
全開聴き逃した言葉はなかったか、
質問、尋問に反応する一挙手一投足、
見逃したところはなかったか、
緊張感を持って観てしまうと言うのがホンネ。
それに関してIMAXは素晴らしい効果。
本当に没入感を持って観られたし、
あの大画面の中心に人物をすえて字幕を観るのが、
こんなにも臨場感があるとは思わなかった。

それにしても。
おそらく良妻賢母ではなかったであろうキティ、
彼女は自分自身が見識のある人間であり、
かつ学者だっただけに強靱でしなやかで、
夫の危機にも自らが立ち向かう。
そして最後の最後、
あの表情は圧巻だった。



今日の帰りのカップルの会話。
女性:「安全保障とかそんなの別に知りたくないんだよ」
男性:「いや、あれが撮ったから面白いかと思ってさ」
多分彼氏から誘ったんでしょうね。
で、女性はおそらく原爆の完成と投下シーン、
その後の日本などを想像していたんでしょうな。
「あれ」とはノーランのことでしょう。
でも残念ながらその「安全保障」において、
オッペンハイマーはもう任せることはできないと断罪されたし、
それはストローズのコンプレックスと屈辱からはめられた罠だし、
それこそがオッペンハイマーが「原爆の父」と言われながらも、
その後国家的プロジェクトから外された原因。

思えば「バーベンハイマー」で盛り上がったアメリカ人も、
もしかしたらあの会話劇はどうでも良かったのかもしれない。
オッペンハイマーによるマンハッタン計画で、
原爆が作り出されて広島、長崎に投下され、
それによって日本が降伏し(実際にはその前に決まっていた)、
戦争を終結させたと言われていること、
そのことが大事だったのだろう。
「アメリカが原爆を作って投下したことの正当化」を描いたと言う人もいたが、
ハッキリ言ってイギリス人であるノーランがそんなことを描く必要性がない。

政治と軍事と科学。
これは切っても切り離せない。
そこに民族問題や人種問題。
そうなったらもう泥沼だ。
でももし次に核が使われる日が来るとすれば、
それは政治的な要因か、
人種、民族的な要因か、
いずれにしてもそこに合理性などない。

核の脅威がなかった時代。
私たちはもう戻ることはできない。
そしてそこにある原発。
それもまた攻撃されれば武器に変わるのだ。



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「ル・アーヴルの靴みがき」 [DVD]




ル・アーヴルの靴みがき(続・死ぬまでにこれは観ろ!) [DVD]

ル・アーヴルの靴みがき(続・死ぬまでにこれは観ろ!) [DVD]

  • 出版社/メーカー: キングレコード
  • 発売日: 2015/08/05
  • メディア: DVD


『街のあかり』などのフィンランドが誇る巨匠アキ・カウリスマキ監督によるヒューマン・ストーリー。フランスの北西部にある港町を舞台に、毎日を必死に生きる庶民たちの生活を描くと同時にヨーロッパとは切っても切れない関係にある難民問題についても問い掛ける。『白い花びら』でも共演したアンドレ・ウィルムとカティ・オウティネンが今回は仲むつまじい夫婦を好演。ごくありふれた人々が紡ぎ出す、心温まる奇跡の物語が観る者の琴線に触れる。

Blu-rayセットに収録されていない作品。
もはやメディアが絶版。
っつーか、なんでこんなに版権切らすんだよ。
おかげで久しぶりにレンタル落ち購入。

ル・アーヴルの庶民の温かさと人情。
みんな自分が苦労しているから、
大変なことがわかっているから優しい。
そしてその優しさはやがて最高の形で奇跡を起こす。

私がカウリスマキが好きなのは、
最後に希望と未来への道筋を照らしてくれるからだ。
それが甘っちょろいロマンチシズムであろうと、
人が人と信じ合うこと、
人が人と助け合うこと、
人が人と愛し合うこと、
その素晴らしさを見事な形で見せてくれる。
それは決して裏切らないし、
どこの国の誰の物語であろうと、
変わらぬ優しさと人としての本質を裏切らない。
ハラハラドキドキしながらも、
何処かで彼を信じているから、
最後の最後で微笑んでエンドロールを観られるから、
彼の映画を観たくてたまらなくなるのだ。

たまたま知り合った密入国をした難民の少年。
その彼を母親のいるロンドンへ送ろうと、
自分も決して裕福でもなく、
妻は病気で入院している靴磨きの男が、
一肌脱いで金を用意しようと奔走する。
その姿は静かなようで必死、
金が足りないとなると、
今度はチャリティコンサートの計画を立てて、
そのために彼を歌う気にさせるために頑張る。
そしてこのチャリティコンサート、
これがまた最高に格好いいのだ。
カウリスマキの音楽センスは毎度恐れ入る。

彼の持つ温かさの虜になったら、
もう二度と忘れられない。


ちなみに今回は、
この時代に合ったフランス車から、
懐かしくも古いフランス車まで堪能できた。

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「オッペンハイマー」 [映画]




本物のオッペンハイマー

本物のオッペンハイマー

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2023/08/30
  • メディア: Prime Video




オッペンハイマー 上 異才 (ハヤカワ文庫NF)

オッペンハイマー 上 異才 (ハヤカワ文庫NF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2024/01/22
  • メディア: Kindle版



オッペンハイマー 中 原爆 (ハヤカワ文庫NF)

オッペンハイマー 中 原爆 (ハヤカワ文庫NF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2024/01/22
  • メディア: Kindle版



オッペンハイマー 下 贖罪 (ハヤカワ文庫NF)

オッペンハイマー 下 贖罪 (ハヤカワ文庫NF)

  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2024/01/22
  • メディア: 文庫



マンハッタン計画 オッペンハイマーの栄光と罪

マンハッタン計画 オッペンハイマーの栄光と罪

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2024/02/21
  • メディア: Prime Video




Oppenheimer [Blu-ray] [2023] [Region Free]

Oppenheimer [Blu-ray] [2023] [Region Free]

  • 出版社/メーカー:
  • メディア: Blu-ray



半年以上待たされて、
その間にアメリカではメディアも発売されて、
一時は買おうかと思ったけれど、
日本語字幕がないから諦めて、
原作となった本は絶版。
フリマでオークションで高値。
やっと復刊したと思ったが、
上巻の途中までしか読めず、
見られたのはAmazon Prime Videoと「映像の世紀バタフライエフェクト」。
オッペンハイマーという人を理解するため、
準備が必要だったのは、
日本人にとっては「原爆の父」とも言われる人の、
人間的側面の情報に触れる機会は少なく、
自分が何も知らない状態だったから。

「オッペンハイマー」(原題:アメリカン・プロメテウス)の上巻、
燃焼時から学生時代までを読んで、
この知識を入れておくことは大きいと思った。
後に「学者バカ」とか「世間知らず」のように言われる人にありがちな、
純粋に学問をすることが好きで、
だけど人間としては性格も手先も不器用で、
それが故にのめり込んだら抜け出せない、
何処か人間として情動的に問題のある人、
そういう人であると言うことを知っていおいたのは、
映画を見る上に置いてとても重要なベースになった。

結論から言ってしまえば、
おっペンハイバーという人は非常に複雑で、
内的にも外的にも矛盾を多々抱えていて、
決して倫理的な人でもなければ、
必ずしも良き夫でも良き父親でもなく、
良き科学者でもなかったことは確か。
彼は本当に「理論物理学者」であり、
自分は傑出した手腕があったわけではないけれど、
多くの専門家の知識と手腕をまとめ上げる能力、
そういう意味での洞察や管理能力に優れていた人。
そしてその能力を最大限群と政府に利用された人。
そう言うことなのだ。
そしてその人間としての欠損故に、
敵を作って過去をほじくり出されて、
彼が原爆使用の後にした発言を取り上げられ、
結果的に彼は追い込まれたのだ、

原爆を作ろうとした動機は「ナチスを壊滅させるため」。
ユダヤ人だった彼にとって、
アウシュビッツで行われていることを思えば、
それは決して無理もないことだった。
あの当時はアメリカ、ドイツ、日本が、
原爆をどこが一番先に作るのかを競っていた。
もちろん作る=使用するなのだが、
しかし結果的にほぼ完成に近づいたところで、
ナチスは降伏してドイツとの戦争は終わる。
軍としては20億ドルをかけたこのプロジェクト、
その成果を何処かで見せることが必要。
そこで見つけた目的が、
「戦争を終わらせることで犠牲者も減らせる」という大義名分で、
日本に原爆投下をすることだった。

徹頭徹尾、
あくまでも理論物理学者だったオッペンハイマーは、
「ナチスを滅ぼす」という大義名分の元に利用され、
余りにも純粋で何かが欠損していた彼は、
それが大量破壊兵器になることも承知、
理論上計算上では、
もしかしたら世界が滅びることにナルコとも勝利、
それでもやらなきゃいられなくなってしまう。
そして広島長崎の営巣、レポートを見せられたとき、
彼は正視することを拒否している。
日本に来たときのコメントでは、
「原爆投下を後悔はしていない」と言ったが、
彼は科学者としては決して後悔していないだろうが、
人間としては違ったのではないだろうか。
学者としては作ったら試したくなる。
だから日本への原爆投下に反対の署名は拒否した。
でも実際にその被害を目の当たりにすることさえできない。
彼は単なる学者。
優秀であるが故に軍に利用された学者。

おそらく広島長崎の人には、
私の主観は受け入れられないだろう。
どんなことがあってもあんなにも残虐な大量殺戮兵器を作った、
そのことの罪は免れないと考えられて当然だ。
何しろ彼は「アメリカン・プロメテウス」なのだから。
彼自身が感じた血塗られた手は決してキレイにはならない。
その感情は理解できる。
だからそのことは否定しないし受け入れる。
だけどこのことはいくら議論しても不毛だ。
彼は作ってしまったし、
軍と政府は投下してしまった。
その事実は変えられないのだから。

さて、映画本体。
いやはや、ノーランには恐れ入った。
こんなにも濃密な人間ドラマを、
彼が脚色して撮影できるとは思っていなかった。
最初1時間は多少かったるい。
説明は細かくはしないが、
オッペンハイマーの学者としてどういう人か、
人間として男としてどういう人間か、
そういうものが描かれているので、
多少なりとも退屈な時間ではある。
ただし私は本で彼のそれ以前を読んでいたので、
ものすごく納得したし、
彼の欠損した部分についての描写に、
「これが後の伏線になる」と思えた。
そこからは怒濤の展開。
彼が陰謀によって追い詰められて行く様子、
追い詰める方が得意げに語る様子、
その緊迫と一瞬も聞き逃せない台詞が続く。
きっかけは些細なことだったけれど、
コンプレックスの塊だったストローズが、
何気ないエリートで裕福なオッペンハイマーの発した言葉から、
こんな事態にまで発展するなんて、
オッペンハイマーには想像もつかなかっただろう。

俳優の人数が多すぎて、
いちいち褒めていたらきりがない。
なので少しだけ。
エミリー・ブラント演じる妻は、
最初から複雑な関係からスタートして、
いつも肝心な所では肝っ玉の据わったおっかさん。
オッペンハイマーにとっては妻と言うより母親だ。
その凄味足るや、
クライマックスの目線一つで人を射殺しそうだった。
そしてトム・コンティ演じるアインシュタイン。
彼は原爆の製造を大統領に助言した。
しかし彼はその罪も自分の中で引き受けていた。
あのお茶目な表情で知られたアインシュタインを、
実に辛気くさく、しかし懐が深い人とiして、
しっかりと演じていたのが感動的。
「水爆の父」となるテラーを演じたベニー・サフディ、
これがまた独特の存在感で、
複雑な思いを抱えて対立しながら、
水爆に反対するオッペンハイマーへの反感を静かに爆発させる。
アカデミー賞受賞俳優はもう当然だから割愛する。
もう本当にちょい役だけど重要ならラミ・マレック、
彼の科学者らしい冷静で理路整然とした口調の素晴らしさ、
ジョシュ・ハートネットの落ち着いた大人としての口調、
不安定で魅力的な女性を体現するフローレンス・ピュー、
書き出したらきりがない。
個人的には最高の演技で最高過ぎた、
ケネス・ブラナー演じるボーア。
あの説得力と人間としての存在感は傑出していた。
オッペンハイマーに影響を与える人物として、
彼は見事なまでに彼の心を決めさせるのと同時に、
大きくかき乱す役割を果たす。

今回私は敢えてシネマスコープで観た。
最初の1回目はこれでちゃんと理解したかった。
そしてラッキーだったことに、
これが特別な音響であるSAIONのスクリーンで、
唯一上映される時間帯が当たった。
これが最高だった。
スクリーンは無理なく全視野に映像も字幕も入る、
そして迫力の音響効果。
実際にシートがフルエルほどの音響なのだ。
そしてこのあとIMAX上映に挑む。
我ながらなかなかいい選択だったと思う。

画面がカラーからモノクロに切り替わるし、
時系列はバラバラだし、
いろいろと錯綜しながら映画はすすむ。
だから一度で理解するのは難しいかもしれない。
でもそれならば何度でも観れば良い。
なんででも観て楽しむ価値がある。
そういう映画だ。
そしてこれは原爆製造と原爆投下を正当化した映画ではない。
むしろ製造したことによって死の神となり、
投下したことで破壊の神となった男、
その男の複雑に引き裂かれる心と人生、
そしてその彼に人生を狂わされた人たちの物語。
でも実際に彼は軍に利用された学者だ。



余談。
映画終了後20代半ばくらいのカップルの会話。
彼女:「すごかったん」
彼氏:「え、でも3時間まではいらないよ:

貴方がどう思うか、
劇場で是非ご覧ください。

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「荒野の用心棒」 [ムービープラス]




荒野の用心棒 完全版 製作50周年Blu-rayコレクターズ・エディション

荒野の用心棒 完全版 製作50周年Blu-rayコレクターズ・エディション

  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2014/10/22
  • メディア: Blu-ray



セルジオ・レオーネが、
黒澤明の許可など一切なく「用心棒」をリメイク。
多くの主演俳優役に断られた挙げ句、
クリント・イーストウッドに回ってきたとき、
彼はシナリオを読み始めて程なく、
これが「用心棒」のリメイクであることに気付いたという。
黒澤明の「用心棒」をイーストウッドがその時に知っていたのも驚き。
そしてこの映画が大ヒットしたが故に、
黒澤の知るところとなり、
結果的に公開の権利を持った。
だからこその「荒野の用心棒」という邦題なのだろう。

元のシナリオがしっかりしている上に、
とんでもない思い切りの良さ、
黒澤にはない撮影の仕方や特徴、
そこにモリコーネの音楽。
そりゃまぁヒットしない方が不思議だ。

で、最後にこれを観て思った。
「賞金稼ぎに飽きたのか、
 それとも賞金稼ぎより割が良かったのか、 
 名前を変えて用心棒になるというのもあり。」
なるほど、これで逆三部作の構成に納得。
わずかだがイーストウッドが若いし、
ちょっと硬い雰囲気なのはご愛敬。
ヒッコリーのシャツに家側のベストにポンチョ。
最終形がそこにあった。

果たしてセルジオ・レオーネがそこを意識したのか、
それは全くわからないのだけど、
まぁ彼ならそのくらいのことは考えるだろう。
しかし後年この作品をモリコーネと二人で観て、
「ひどいものだ」と二人で笑い合ったというのだから、
それなりに手をかけ時間をかけていたが、
後年の彼らの価値観からは「ひどいもの」だったのだろう。
まぁ存外この手の映画は娯楽映画であり、
いろいろと小難しいことを言う評論家には評価されないし、
所詮安価な予算で粗製乱造したと言った方が良い、
スパゲッティ・ウェスタンの一つなのだから、
彼らの仕事にとってはその程度の認識なのかも知れない。

逆に言えば、
難しいことなど考えず、
ただ面白いものを撮りたくて、
ただ安く音楽を作らなきゃならなくて、
いろいろ工夫した結果が結実することもある。
その精神が開拓する時代もあると言うことだ。

そういう意味では天晴れ。
同級生コンビに万歳。

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「ソフト/クワイエット」 [WOWOW]



とある郊外の閑静な町。幼稚園に勤めるエミリーは、「アーリア人団結をめざす娘たち」という白人至上主義のグループを結成する。教会での会合に集まったのは、主催者のエミリーを含む6人の女性。多文化主義や多様性が重んじられる現代の風潮に反感を抱き、有色人種や移民を毛嫌いする6人は、日頃の不満や過激な思想を共有して大いに盛り上がる。やがてエミリーの自宅で二次会を行うことにするが、途中立ち寄った食料品店でアジア系の姉妹との激しい口論が勃発。それは取り返しのつかない残虐でおぞましい犯罪の始まりだった。


ソフト/クワイエット

ソフト/クワイエット

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2023/09/01
  • メディア: Prime Video



本家「大渋滞」で宮藤さんが見て、
とんでもない映画だと言うことを仰っていて、
即刻探したらWOWOWオンデマンドで観られたので観たけど、
今までの映画史上最低で最悪でもっとも胸くそ悪い映画。
始まりの集会からしてもう最悪なのに、
そのレイシズムがちょっとした悪戯心から、
とんでもない事態になっていく。

やっぱり子どもという守るものがある人、
つまり母親は割合現実に立ち返るのも早いし、
比較的まともなんだけど、
現場の雰囲気とその他のろくでなしに引きずられる。
誰か一人が口火を切ったレイシズムは、
それぞれが普段不満に思っていることに着火して、
もうどうやっても止められない炎となり、
やがてそれは不法な放火になり、
挙げ句の果てにやっていることは、
そこら辺の飲食店でガキがやっている、
バカッターな行動と何も変わらず、
誰も望まない酷いことになる。

でもこいつら反省しないよね。
レイシズム、差別、虐待が悪いなんて絶対に思わない。
「あいつらがこの国にやってきた。 
 あいつらがあたしらの職場を奪った.
 あいつらがあたしたちが快適に暮らす権利を奪っている。」
いや、こんなの今の日本人だって同じだよ。
ヘイトで外国人を罵る言葉は民族を攻撃しているし、
ナチスだってイスラエルだって、
「民族浄化」をしようとしている。

そのきっかけはこんな些細なことなんだな。

そう思ったことが一番怖かった。

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「夕陽のガンマン」 [ムービープラス]




夕陽のガンマン [Blu-ray]

夕陽のガンマン [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2017/11/03
  • メディア: Blu-ray


<ストーリー>
殺人者のインディオを追って、射撃の名手で名高い賞金稼ぎのモーティマー大佐と、新顔の賞金稼ぎ“名なし"がエルバソの街にやってくる。インディオ一味に潜入するために、同じ目的を持つ二人は手を組んで作戦を企てることに……。

原題「For a Few Dollars More 」。 
何とも身もフタもない題名だし、
どこがどうなれば「夕陽のガンマン」になるのやら。
とはいえ、
昔の映画配給会社の邦題をつけるセンスは、
水野晴郎先生だけではなく、
かなり行けているものがあった。
別に全く続編でも何でもない作品に、
「続」とつけてしまうくらいの力技も。

ポンチョを着けてモンコ登場。
「名無し」ではない。
この辺りも如何にも宣伝目的の戦略的建前。
そのポンチョは「続・夕陽のガンマン」でラストに登場する。
そう、なるほどとここで思う。
やはり逆に観ると納得できたりするのだ。
リー・ヴァン・クリーフが別人なのはさておいて。
つまり桑畑三十郎と椿三十郎なのだ。

モーティマー大佐とモンコのバディものとしてみると、
このシリーズでは珍しいのだが、
結果的にモーティマー大佐は賞金稼ぎではないし、
最終的な目的は最後に明らかになり、
全ての賞金はモンコに譲る。
ネタバレではあるがそこは重要ではない。
モーティマー大佐がインディオ一味を追う理由も、
モンコにはどうでも良いことだし、
互いの信頼さえ築ければそれでOK。
それは結構シーンで充分過ぎるほどに、
互いの信頼を得るに足る腕前を見せ合った。
こんなところがまた粋じゃないか。

ハリウッドで作られた西部劇と、
決定的に違うところは、
「白人=善、先住民族=悪」ではなく、
民族にも肌の色にも関係なく。
どっちも善悪では諮れないところだと思う。
賞金稼ぎが善なのかと言えば、
金を稼ぐためにお尋ね者を捕まえたり殺したり、
そして御上に差し出すのが仕事。
これを決してキレイな仕事とは言えないだろう。
もちろん復讐のために銃を取ることも。
きれいごとではすすまないから面白い。
イタリア人のものの見方はアメリカ人とは違うし、
その音楽のつけ方も独特だった。
同じ小学校の同級生だったセルジオとエンニオは、
お互いの天才ぶりを知らずに仕事を始めて、
世界にその名を知らしめることとなる。
セルジオ・レオーネの迫力ある映像だけでなく、
その映像をもり立てる音楽、
これが強烈に世界中の人の心を惹きつけた。

外連味という点ではこの後の方が凄まじいが、
こちらは「確立」という点では、
見事にドル三部作の美学が詰まっている。

鳴かず飛ばずだったイーストウッド。
このスパゲッティ・ウェスタンへの出演は、
見事だったし賢明な判断だった。

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「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」 [ムービープラス]


続 夕陽のガンマン MGM90周年記念ニュー・デジタル・リマスター版 [Blu-ray]

続 夕陽のガンマン MGM90周年記念ニュー・デジタル・リマスター版 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2017/11/03
  • メディア: Blu-ray


<ストーリー>
南北戦争の混乱の中、賞金稼ぎのブロンディーは賞金がかかった悪党と手を組んで荒稼ぎをしていた。そんな折、巷で話題になっていた20万ドルを盗み隠した男の死に際に出会う。たった一人隠し場所を訊いたブロンディー。だが彼の周りには軍隊、賞金稼ぎ、賞金首の男……それぞれの男たちの欲望が、友情と裏切りの狭間で死闘を繰り広げるのだった。果たして20万ドルは本当にあるのか? 最期に手にするのはいったい誰なのか……?

実はこのBlu-ray持っている。
山田康雄の吹き替え版も収録されていて、
私が買ったときは正規の価格だったけど、
今はプレミアがついている。
入手困難だから絶対に売りませんけどねw。 
ちなみにうちの円盤には「地獄の決斗」なんて副題はついていない。

で、今現在劇場で「ドル三部作4K版純次上映中。


映画秘宝 2024年 05 月号 [雑誌]

映画秘宝 2024年 05 月号 [雑誌]

  • 出版社/メーカー: 秘宝新社
  • 発売日: 2024/03/21
  • メディア: 雑誌



愛する「映画秘宝」にその特集がされていて、
「これは仰る通りに最後から遡って観なければ」と。

去年の暮れにムービープラスで、
ドル三部作を放映していたので録画済み。
もちろん本当は映画館で観たいけれど、
生憎ちょっと今事情が許さない。
と言うことで家で上映会実施。

やはりこの作品はセルジオ・レオーネも渾身の力で、
俳優も配役も演出も撮影も編集も全力投球。
モリコーネも最初は気乗りしなかったウェスタンも、
ここまで来るとかなりノリノリの雰囲気。

なんでこんなに面白いんだろうって思うけど、
何しろクローズアップの映像の迫力がすごい。
そして広い荒野を映したかと思えば、
生々しい殺戮の場面をまた仔細に描く。
今の映画よりダイナミックだなぁと思うのは、
おそらく生の映像でそれをやるから。
今のようにCGとかVFXと無縁だから。
要するに人間が生身で作った映画だから。
これがやっぱり一番の迫力なんだなぁと。

いや、トム・クルーズだって生身で頑張っているんだけどね。

確かに以前観た時には気付かなかったけど、
ブロンディーが最後にポンチョ姿で現れる。
「おお、ここからか!」
と言うことで遡って観なければ。
 
最近昔の映画の見返しが多いなぁ。
新しいものに興味がなくなるって、
認知症の始まりかもね。


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「漫画みたいにいかない。」 [DVD&Blu-ray]


漫画みたいにいかない。上巻 Blu-ray

漫画みたいにいかない。上巻 Blu-ray

  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2018/02/09
  • メディア: Blu-ray



漫画みたいにいかない。下巻 Blu-ray

漫画みたいにいかない。下巻 Blu-ray

  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2018/03/16
  • メディア: Blu-ray


根拠もなく「ビックになる!」と意気込み漫画家になるも、全く売れる気配のない主人公の戸塚オサムは、今日も頼りないアシスタントの荒巻と事務所兼自宅で新作漫画を執筆中。
だが、ひとり娘のるみ、編集者の足立、幼馴染みで定食屋を営む鳥飼がいつも問題を持ち込んできて漫画制作どころではなくなってしまう。。
「ほとんどの大人の人生は...どうして漫画みたいに上手くいかないんだ」5人の日常と不満が、シニカルな笑いを生み出していく。

まだ続いているマイブーム。
どうしても東京03の演技が観たい。
中古が安かったので思わず。

設定は一つ。
そこで繰り広げられる毎回のコントみたいなドラマ。
基本的な性格や役割は普段のコントと一緒。

そんな中でいつも「いいよなー」と思えるのが、
すっとぼけてしれっとうまいことやる豊本っちゃん。
今回もしれっとやらかしてくれて、
いつも割りを食うのは角ちゃん。

この安定と安心感。
わかっているけどつい観てしまう。
そして思った以上に大事になったりして。
それがなんだかわからないけれど、
観る度新鮮でまた観てしまう。

ゆえに東京03の作品は円盤で欲しい。 
これはこれで物理的保管場所も、
金銭的にも困ったものなのだが。

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「ラヴィ・ド・ボエーム」 [DVD&Blu-ray]



家賃が払えずパリのアパートから追い出された作家のマルセル(アンドレ・ウィルム)は、レストランでアルバニア人の画家志望ロドルフォ(マッティ・ペロンパー)と出会う。意気投合した二人はマルセルのアパートに向かうが、そこにはすでに売れない作曲家のショナール(カリ・ヴァーナネン)が入居しており、貧しい彼らは共同生活を始める。

何ともいえず、
愉快でご都合主義な共同生活。
時間がたっても何もすすまず。
誰一人何もなさず。
適当なパトロンを見つけて、
とりあえず画を売ることはできても、
だけど一歩外の画廊に持ち込めば一門の価値もない。
作曲家は全く何をしているのかわからないし、
作家は物語を書くのではなく、
けっきょく商売に手を出して。

陸続きのヨーロッパならではの物語。
こう言う話を見ると、
さすがに羨ましいなぁと言うか、
何というか日本ではできないなぁと。
そこがまたロマンチック。

貧しいけどめげないし、
生きることには一生懸命。
隙あらば楽しい生活を夢見て勝負w。
こういう風に彼らを描けるのが、
カウリスマキ監督の面白さと良さ。
ホッとするし、
何かとても希望が持てる。

貧しいことも、
夢が叶わないことも、
全然不幸ではない。
生活の中のどこにでも楽しみはある。
自分を豊かにする術はある。

歳を取ったからこそ、
むしろこういう生活に到達してみたい。

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「エル・スール」 [DVD&Blu-ray]




エル・スール Blu-ray

エル・スール Blu-ray

  • 出版社/メーカー: IVC,Ltd.(VC)(D)
  • 発売日: 2015/06/19
  • メディア: Blu-ray


【内容】
1957年、秋。ある朝、少女エストレリャは目覚めると、枕の下に父アグスティンの振り子を見つける。エストレリャは父が死んだことを悟る。彼女は回想する。内戦下のスペイン、<南>の町から<北>の地へと引っ越す家族。8歳のエストレリャが過ごした“かもめの家”での暮らしが語られる…。父アグスティンを演じるのはスペインの名優、オメロ・アントヌッティ。

「ミツバチのささやき」が余りに大評判で、
めちゃくちゃに評価されたが故に、
迷路に入り込んだビクトル・エリセ監督の10円ぶり第二作。
最初3時間で作ってしまって、
けっきょく半分で公開された曰く付き。

あのー、
ものすごく良い雰囲気だし、
微妙に揺れる一家の心や立場が、
ジワジワと沁みてくるし、
それが「さぁ新しい旅立ち」ってことで終わる。
素人で何も知らなかったらそれで良いかなって思う。
でも残り1時間半合ったのかと思うと、
それってどんな話?って考えてしまう。
その反動だろうなぁ、
「瞳をとじて」が3時間近いのも。

多分年齢もあるんだろうけど、
私はお母さんの立場になんか思い入れが。
内線の影響で教職から追放されて、
家で編みものをして家事をする。
なんか一時の自分の生活のようで、
私の場合家族もいないから、
本当に誰の役にも立っていないし、
自分の存在理由がわからなくなっていた。
あのお母さんは他の女性に心を残していて、
それでいて良い父親でもある夫を、
どんな風に考えていたんだろう。

最近思うんだけど、
アキ・カウリスマキもビクトル・エリセ監督も、
めちゃくちゃ究極的にロマンチスト。
還暦のお婆ちゃんからすると、
「男って奴はいくつになっても」って感じ。
なんだけど観ると感動しちゃうw。 
わかっているんだけどね、
映画の中でも女の方が現実的で、
男は逃避的な生きものだから。


なので、
変な余韻があるが故に、
「瞳をとじて」がとても楽しみ。


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