SSブログ

「荒野の用心棒」 [ムービープラス]




荒野の用心棒 完全版 製作50周年Blu-rayコレクターズ・エディション

荒野の用心棒 完全版 製作50周年Blu-rayコレクターズ・エディション

  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2014/10/22
  • メディア: Blu-ray



セルジオ・レオーネが、
黒澤明の許可など一切なく「用心棒」をリメイク。
多くの主演俳優役に断られた挙げ句、
クリント・イーストウッドに回ってきたとき、
彼はシナリオを読み始めて程なく、
これが「用心棒」のリメイクであることに気付いたという。
黒澤明の「用心棒」をイーストウッドがその時に知っていたのも驚き。
そしてこの映画が大ヒットしたが故に、
黒澤の知るところとなり、
結果的に公開の権利を持った。
だからこその「荒野の用心棒」という邦題なのだろう。

元のシナリオがしっかりしている上に、
とんでもない思い切りの良さ、
黒澤にはない撮影の仕方や特徴、
そこにモリコーネの音楽。
そりゃまぁヒットしない方が不思議だ。

で、最後にこれを観て思った。
「賞金稼ぎに飽きたのか、
 それとも賞金稼ぎより割が良かったのか、 
 名前を変えて用心棒になるというのもあり。」
なるほど、これで逆三部作の構成に納得。
わずかだがイーストウッドが若いし、
ちょっと硬い雰囲気なのはご愛敬。
ヒッコリーのシャツに家側のベストにポンチョ。
最終形がそこにあった。

果たしてセルジオ・レオーネがそこを意識したのか、
それは全くわからないのだけど、
まぁ彼ならそのくらいのことは考えるだろう。
しかし後年この作品をモリコーネと二人で観て、
「ひどいものだ」と二人で笑い合ったというのだから、
それなりに手をかけ時間をかけていたが、
後年の彼らの価値観からは「ひどいもの」だったのだろう。
まぁ存外この手の映画は娯楽映画であり、
いろいろと小難しいことを言う評論家には評価されないし、
所詮安価な予算で粗製乱造したと言った方が良い、
スパゲッティ・ウェスタンの一つなのだから、
彼らの仕事にとってはその程度の認識なのかも知れない。

逆に言えば、
難しいことなど考えず、
ただ面白いものを撮りたくて、
ただ安く音楽を作らなきゃならなくて、
いろいろ工夫した結果が結実することもある。
その精神が開拓する時代もあると言うことだ。

そういう意味では天晴れ。
同級生コンビに万歳。

コメント(0) 

「ソフト/クワイエット」 [WOWOW]



とある郊外の閑静な町。幼稚園に勤めるエミリーは、「アーリア人団結をめざす娘たち」という白人至上主義のグループを結成する。教会での会合に集まったのは、主催者のエミリーを含む6人の女性。多文化主義や多様性が重んじられる現代の風潮に反感を抱き、有色人種や移民を毛嫌いする6人は、日頃の不満や過激な思想を共有して大いに盛り上がる。やがてエミリーの自宅で二次会を行うことにするが、途中立ち寄った食料品店でアジア系の姉妹との激しい口論が勃発。それは取り返しのつかない残虐でおぞましい犯罪の始まりだった。


ソフト/クワイエット

ソフト/クワイエット

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2023/09/01
  • メディア: Prime Video



本家「大渋滞」で宮藤さんが見て、
とんでもない映画だと言うことを仰っていて、
即刻探したらWOWOWオンデマンドで観られたので観たけど、
今までの映画史上最低で最悪でもっとも胸くそ悪い映画。
始まりの集会からしてもう最悪なのに、
そのレイシズムがちょっとした悪戯心から、
とんでもない事態になっていく。

やっぱり子どもという守るものがある人、
つまり母親は割合現実に立ち返るのも早いし、
比較的まともなんだけど、
現場の雰囲気とその他のろくでなしに引きずられる。
誰か一人が口火を切ったレイシズムは、
それぞれが普段不満に思っていることに着火して、
もうどうやっても止められない炎となり、
やがてそれは不法な放火になり、
挙げ句の果てにやっていることは、
そこら辺の飲食店でガキがやっている、
バカッターな行動と何も変わらず、
誰も望まない酷いことになる。

でもこいつら反省しないよね。
レイシズム、差別、虐待が悪いなんて絶対に思わない。
「あいつらがこの国にやってきた。 
 あいつらがあたしらの職場を奪った.
 あいつらがあたしたちが快適に暮らす権利を奪っている。」
いや、こんなの今の日本人だって同じだよ。
ヘイトで外国人を罵る言葉は民族を攻撃しているし、
ナチスだってイスラエルだって、
「民族浄化」をしようとしている。

そのきっかけはこんな些細なことなんだな。

そう思ったことが一番怖かった。

コメント(0) 

「夕陽のガンマン」 [ムービープラス]




夕陽のガンマン [Blu-ray]

夕陽のガンマン [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2017/11/03
  • メディア: Blu-ray


<ストーリー>
殺人者のインディオを追って、射撃の名手で名高い賞金稼ぎのモーティマー大佐と、新顔の賞金稼ぎ“名なし"がエルバソの街にやってくる。インディオ一味に潜入するために、同じ目的を持つ二人は手を組んで作戦を企てることに……。

原題「For a Few Dollars More 」。 
何とも身もフタもない題名だし、
どこがどうなれば「夕陽のガンマン」になるのやら。
とはいえ、
昔の映画配給会社の邦題をつけるセンスは、
水野晴郎先生だけではなく、
かなり行けているものがあった。
別に全く続編でも何でもない作品に、
「続」とつけてしまうくらいの力技も。

ポンチョを着けてモンコ登場。
「名無し」ではない。
この辺りも如何にも宣伝目的の戦略的建前。
そのポンチョは「続・夕陽のガンマン」でラストに登場する。
そう、なるほどとここで思う。
やはり逆に観ると納得できたりするのだ。
リー・ヴァン・クリーフが別人なのはさておいて。
つまり桑畑三十郎と椿三十郎なのだ。

モーティマー大佐とモンコのバディものとしてみると、
このシリーズでは珍しいのだが、
結果的にモーティマー大佐は賞金稼ぎではないし、
最終的な目的は最後に明らかになり、
全ての賞金はモンコに譲る。
ネタバレではあるがそこは重要ではない。
モーティマー大佐がインディオ一味を追う理由も、
モンコにはどうでも良いことだし、
互いの信頼さえ築ければそれでOK。
それは結構シーンで充分過ぎるほどに、
互いの信頼を得るに足る腕前を見せ合った。
こんなところがまた粋じゃないか。

ハリウッドで作られた西部劇と、
決定的に違うところは、
「白人=善、先住民族=悪」ではなく、
民族にも肌の色にも関係なく。
どっちも善悪では諮れないところだと思う。
賞金稼ぎが善なのかと言えば、
金を稼ぐためにお尋ね者を捕まえたり殺したり、
そして御上に差し出すのが仕事。
これを決してキレイな仕事とは言えないだろう。
もちろん復讐のために銃を取ることも。
きれいごとではすすまないから面白い。
イタリア人のものの見方はアメリカ人とは違うし、
その音楽のつけ方も独特だった。
同じ小学校の同級生だったセルジオとエンニオは、
お互いの天才ぶりを知らずに仕事を始めて、
世界にその名を知らしめることとなる。
セルジオ・レオーネの迫力ある映像だけでなく、
その映像をもり立てる音楽、
これが強烈に世界中の人の心を惹きつけた。

外連味という点ではこの後の方が凄まじいが、
こちらは「確立」という点では、
見事にドル三部作の美学が詰まっている。

鳴かず飛ばずだったイーストウッド。
このスパゲッティ・ウェスタンへの出演は、
見事だったし賢明な判断だった。

コメント(0)