SSブログ

「白い花びら」 [DVD&Blu-ray]


白い花びら (字幕版)

白い花びら (字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2021/03/08
  • メディア: Prime Video


フィンランドのの国民的作家ユハニ・アホの名作をサイレント・フィルムとして映画化した異色の悲喜劇。フィンランドの片田舎。自分たちの作ったキャベツを市場に売りに行き、生活している夫婦ユハとマルヤ。キャベツは飛ぶように売れ、幸せな日々を送っていた。そんな2人のもとに光り輝くオープンカーに乗って、カサノバ風な男シュメイッカが現れ、マルヤを誘惑する…。

あらすじはありがちな物語。
田舎娘をたぶらかしたジジィが、
彼女を連れ出して良いようにこき使おうと。
捨てられた夫は失意のどん底から、
復讐に立ち上がるという何ともいえない三文オペラ。
それを全編台詞なしの無声映画で見せる。
台詞は最小限の字幕のみ。
ただ一カ所言葉があるのは歌の部分。

個人的には面白かったのだけど、
世間の評価はそれほど芳しくない。

たぶん「マッチ工場の少女」なみに陰鬱だし、
なんなら最後なんて、
どう見ても「灰とダイヤモンド」クラスの救いのなさ。
とにかく先を見通しても絶望ばかり。
本当に主人公が救われたのかもわからない。

でもカウリスマキ監督作品は、
都会の労働者が多いので、
田舎の農夫と言うだけでも新鮮だし、
自然を映し出すシーンでは、
「おお、フィンランドの美しさがステキ」と思える。
本当にそのシーンは、
新鮮に感じたし、
「こんなシーン観たことない」って思いましたわ。

ユーモア控え目。
原作があるとカウリスマキって、
案外かなりシビアでシリアスな監督。 


コメント(0) 

「トータル・バラライカ・ショー」 [DVD&Blu-ray]


トータル・バラライカ・ショー

トータル・バラライカ・ショー

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2024/02/15
  • メディア: Prime Video


レニングラード・カウボーイズとアレクサンドル・レッド・アーミー・コーラス・アンド・アンサンブルとのジョイント・ライブの模様を描いたドキュメンタリー作品。レニングラード・カウボーイズと、ソ連崩壊によって大量にあぶれた退役軍人と民族舞踏団とで構成された、総勢167名がロシア民謡を感傷&ボリュームいっぱいに演奏する。欧米ポップスの生真面目なカバーも笑いを誘い、最後はノリノリのR&R大会で、楽団員も立ち上がってリズムをとる。

胸アツで思わず拍手と落涙。
今の若い人はどうか知らないが、
私が子どもの頃はロシア民謡とか楽曲が入ってきていて、
あとモスクワ放送が聴けたりしたこともあって、
意外なほど有名なロシアの曲にはなじみがあるのだ。

まだソビエト崩壊食後で、
当時の世相が色濃く残る時期。
このときのコンサートの映像は格別な何かがある。
何しろ167名の楽団の力一杯の演奏と歌唱、
そこにはもうイデオロギーも何もなく、
肩を組んで歌い、
会場中から湧き上がる拍手に包まれて、
音楽には国境はないんだと心の底からわき上がる思い。

いや、油断した。
マジで泣いた。
こんなに素晴らしいとは思わなかった。
特に「Happy Together」。
これも肋骨レコードで広まったのだろうか。

様々なソビエト時代の厳しさを思い、
今また一人の独裁者に支配されているロシアに思いを寄せ、
なぜ時代は逆行するのか、
人は過ちを繰り返すのか、
とても哀しくなって号泣してしまった。

コメント(0) 

「カラマリ・ユニオン」 [DVD&Blu-ray]


カラマリ・ユニオン [DVD]

カラマリ・ユニオン [DVD]

  • 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
  • 発売日: 2002/12/21
  • メディア: DVD


アキ・カウリスマキの長編第2作。独特のユーモア、素朴な残酷さと毒が前面に出たロッキンな爽快作だ。
「ここではないどこかへの脱出」とは、幾多もの映画で描かれてきた永遠のテーマ。この壮大かつ普遍的なテーマを、隣町への脱出というバカバカしいような設定に託したロードムービーである。カラマリ・ユニオン(イカ墨同盟)のメンバーである15人の“フランク”が、街の反対側にある理想の街エイラへと脱出を試みる。15人すべての男の名が“フランク”であったり、地下鉄を強奪して深夜の街を移動したりと、登場人物たちの行動は謎だらけ。観客を置き去りにしたまま物語が進んでいく。
町内を駆け回るだけのロードムービーというのがいかにもカウリスマキ的だが、街角でこっけいなまでに必死に生きる彼らの姿はそのまま生きることの象徴になっており、生きることの厳しさと毒気と希望が詰め込まれている。15人の“フランク”には、カウリスマキの第1作『罪と罰』のマルック・トイッカやレニングラード・カウボーイズのメンバーらも出演している。カウリスマキ・ファンには見逃せない1作だ。(茂木直美)

本当に訳わかんねーw。 
そして最高にロックだしw。 
なんかもうこの2作目にして、
アキ・カウリスマキ節全開。 
訳もわからず間に進む労働者、
だけど世の中不条理で、
なぜかピストルでバンバン殺される。
そしてやっとたどり着いたところで、
ああやっと・・・と言う雰囲気の中、
何ともいえない音楽と共に、
「ボーはおそれている」とも通じるようなラスト。
この映画の何が面白いのか、
言葉でわかるように説明しろと言われても、
どうやっても説明不能だし、
言葉でわかってもらえる面白さでもない。

この人のモノクロ映画には、
昔々の韓国映画にも通じるような、
何ともいえないやるせなさと悲壮感がある。
それはもしかしたら、
この当時ソ連と国境を接し、
東欧諸国とも地理的にも近い関係、
そう言うシチュエーションや環境が影響しているのかもしれない。
決してわかりやすい戸は言えない笑いや、
何かを象徴しているような存在の出演者や、
わかりやすい西のロックポップスと共に、
北欧の曲なのか、民謡なのか、それすらわからないが、
ちょっと陰鬱な曲が共存するのも、
ある意味フィンランドの政治的地勢的微妙さ、
これが影響しているのだろう。

そもそもこのあと、
レニングラード・カウボーイズなんてものを考えるのだから、
如何にソ連と切っても切れない存在だったか、
それがよくわかるというものだ。

コメント(0) 

「ハムレット・ゴーズ・ビジネス」 [DVD&Blu-ray]


ハムレット・ゴーズ・ビジネス (字幕版)

ハムレット・ゴーズ・ビジネス (字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2024/02/15
  • メディア: Prime Video







シェイクスピアの戯曲「ハムレット」を題材に、現代社会における企業乗っ取りをサスペンスタッチで描いたブラック・コメディ。ある企業の社長が何者かに殺害された。その息子ハムレットは父の残した会社を継ごうとするが、彼の伯父が会社の乗っ取りを企んでいた。ハムレットは会社の権利を守るため、ある商品の世界的独占権を武器に伯父と対立するのだが……。

腹黒ハムレット。
見事に翻案。 
悲劇なのだが喜劇。
感情たっぷり大袈裟なまでの、
シェイクスピア劇との対比。
父親の亡霊にあっても、
まったく激さないハムレット。
ある意味黒澤版「生きる」を、
カズオ・イシグロが「もし小津が作ったら」とリメイクしたような、
そんな雰囲気で流れていく。

ハムレット役の役者、
これがちょっとポール・ダノに似ていて、
もうそれだけで「面白い」と思わせるのは、
今だからの偶然なんだろうけど、
いずれにしても、
誰一人ハムレットの悲壮感を生み出す雰囲気がない。
逆に言えば、
ハムレットの翻案は数あれど、
私はこの雰囲気と役者たちが一番好きだ、

悲劇と喜劇は紙一重で背中合わせ。
「あ、間違っちゃった」
それでこうなるのもまた一興。
って言うか、
人生なんてそんな偶然の面白さがスパイスだし。 

コメント(0)