「レベル7 福島原発事故、隠された真実」 [本]
内容紹介
高さ15メートルの津波、大量の放射性物質漏出、全電源喪失……。
すべての危機は警告され、握り潰された。
震災直後から、東京電力や政府におもねることなく原発事故の真実を報じ、
国民の絶大な支持を得た東京新聞。
本書はその東京新聞の大反響連載「レベル7」を大幅に加筆して単行本化。
第一部「福島原発の一週間」では、福島第一原発、周辺自治体、東電本店、
首相官邸の緊迫の一週間を同時進行でリアルに再現。
第二部以降では、事故直前から日本に原発が導入された1950年代にまでさかのぼり、執念の独自取材によって明らかにする。
事故は決して「想定外」ではなく、起こるべくして起きた。
原発と日本人の関係を描き切った、歴史に刻まれるべきノンフィクション。
原発報道の中で、
他の大手新聞とは違う立ち位置で報道してきた東京新聞。
今朝日新聞は徐々に脱原発に傾きつつあるが、
東京新聞はあくまでも最初から客観的に、
「脱原発が望ましい」という姿勢があるように思われた。
読売新聞が原発ムラにいることは、
本書を読めば理由がわかる。
ある意味「知ろうとしなければ」ブラックボックスである、
事故発生直後から1週間。
「直ちに健康に影響を及ぼすものではない。」
建屋が水素爆発を起こして破壊され、
放射線が多量に放出されたにもかかわらず、
政府の発表は一貫して安全を訴える。
事故直後から懸念されていたメルトダウンも、
「ない」と言い続ける。
その実事故現場で起こっていたことはなんだったのか?
克明に記された記事は緊迫感に充ち満ちている。
そして読み進むうちに腹が立ってくる。
「こんな重大事を隠蔽していたのか」と。
政府、電力会社、原子力ムラは、
安全神話をでっち上げて、
地場産業に乏しく運営が苦しい自治体に甘い汁をちらつかせ、
作りも作ったり原発55基。
当時の模様を読んでみれば、
自治体が原発を誘致したことも、
それによって落ちてくる原発マネーで潤ったことも、
当事者たちを責めることは出来ないと思えてくる。
「国策」としてすすめた原子力政策は、
半世紀を経て崩壊した。
安全神話はあくまでも神話だった。
それでも政府は再稼働をごり押しする。
なぜ原発を動かさなければならないのか。
その根源がこの本には書いてある。
最終章には廃炉への工程の困難さが書かれている。
スリーマイル島の実例を挙げながら、
福島ではその何十倍も何百倍も困難を極めることが示唆されている。
お為ごかしの「収束宣言」の空虚さ、
機械さえも破壊する放射能の強さ、
淡々と実例を交えて書かれる廃炉への道は、
余りにも絶望的で先が見えない。
「自分には関係ない」、
或いは「知りたいけど怖い」と思う人は読まない方が良い。
日本人がいかに愚かな道を辿って原子力に邁進し、
作り上げられた虚構の安全神話を信じ込もうとして、
「万が一」の時の備えが以下に出来ていなかったか、
知らない方が幸せかも知れない。
そしてこれからも続く原子炉と放射能との共存に、
絶望を覚えるかも知れない。
2012-04-21 16:25
コメント(1)
私も読みました。
確かに廃炉までは、まだまだ時間がかかるのでしょうね。
事故当時を思い出して、気分が悪くなってきました。
by 本のソムリエ (2013-04-04 20:22)