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「荒野の用心棒」 [ムービープラス]




荒野の用心棒 完全版 製作50周年Blu-rayコレクターズ・エディション

荒野の用心棒 完全版 製作50周年Blu-rayコレクターズ・エディション

  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2014/10/22
  • メディア: Blu-ray



セルジオ・レオーネが、
黒澤明の許可など一切なく「用心棒」をリメイク。
多くの主演俳優役に断られた挙げ句、
クリント・イーストウッドに回ってきたとき、
彼はシナリオを読み始めて程なく、
これが「用心棒」のリメイクであることに気付いたという。
黒澤明の「用心棒」をイーストウッドがその時に知っていたのも驚き。
そしてこの映画が大ヒットしたが故に、
黒澤の知るところとなり、
結果的に公開の権利を持った。
だからこその「荒野の用心棒」という邦題なのだろう。

元のシナリオがしっかりしている上に、
とんでもない思い切りの良さ、
黒澤にはない撮影の仕方や特徴、
そこにモリコーネの音楽。
そりゃまぁヒットしない方が不思議だ。

で、最後にこれを観て思った。
「賞金稼ぎに飽きたのか、
 それとも賞金稼ぎより割が良かったのか、 
 名前を変えて用心棒になるというのもあり。」
なるほど、これで逆三部作の構成に納得。
わずかだがイーストウッドが若いし、
ちょっと硬い雰囲気なのはご愛敬。
ヒッコリーのシャツに家側のベストにポンチョ。
最終形がそこにあった。

果たしてセルジオ・レオーネがそこを意識したのか、
それは全くわからないのだけど、
まぁ彼ならそのくらいのことは考えるだろう。
しかし後年この作品をモリコーネと二人で観て、
「ひどいものだ」と二人で笑い合ったというのだから、
それなりに手をかけ時間をかけていたが、
後年の彼らの価値観からは「ひどいもの」だったのだろう。
まぁ存外この手の映画は娯楽映画であり、
いろいろと小難しいことを言う評論家には評価されないし、
所詮安価な予算で粗製乱造したと言った方が良い、
スパゲッティ・ウェスタンの一つなのだから、
彼らの仕事にとってはその程度の認識なのかも知れない。

逆に言えば、
難しいことなど考えず、
ただ面白いものを撮りたくて、
ただ安く音楽を作らなきゃならなくて、
いろいろ工夫した結果が結実することもある。
その精神が開拓する時代もあると言うことだ。

そういう意味では天晴れ。
同級生コンビに万歳。

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「夕陽のガンマン」 [ムービープラス]




夕陽のガンマン [Blu-ray]

夕陽のガンマン [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2017/11/03
  • メディア: Blu-ray


<ストーリー>
殺人者のインディオを追って、射撃の名手で名高い賞金稼ぎのモーティマー大佐と、新顔の賞金稼ぎ“名なし"がエルバソの街にやってくる。インディオ一味に潜入するために、同じ目的を持つ二人は手を組んで作戦を企てることに……。

原題「For a Few Dollars More 」。 
何とも身もフタもない題名だし、
どこがどうなれば「夕陽のガンマン」になるのやら。
とはいえ、
昔の映画配給会社の邦題をつけるセンスは、
水野晴郎先生だけではなく、
かなり行けているものがあった。
別に全く続編でも何でもない作品に、
「続」とつけてしまうくらいの力技も。

ポンチョを着けてモンコ登場。
「名無し」ではない。
この辺りも如何にも宣伝目的の戦略的建前。
そのポンチョは「続・夕陽のガンマン」でラストに登場する。
そう、なるほどとここで思う。
やはり逆に観ると納得できたりするのだ。
リー・ヴァン・クリーフが別人なのはさておいて。
つまり桑畑三十郎と椿三十郎なのだ。

モーティマー大佐とモンコのバディものとしてみると、
このシリーズでは珍しいのだが、
結果的にモーティマー大佐は賞金稼ぎではないし、
最終的な目的は最後に明らかになり、
全ての賞金はモンコに譲る。
ネタバレではあるがそこは重要ではない。
モーティマー大佐がインディオ一味を追う理由も、
モンコにはどうでも良いことだし、
互いの信頼さえ築ければそれでOK。
それは結構シーンで充分過ぎるほどに、
互いの信頼を得るに足る腕前を見せ合った。
こんなところがまた粋じゃないか。

ハリウッドで作られた西部劇と、
決定的に違うところは、
「白人=善、先住民族=悪」ではなく、
民族にも肌の色にも関係なく。
どっちも善悪では諮れないところだと思う。
賞金稼ぎが善なのかと言えば、
金を稼ぐためにお尋ね者を捕まえたり殺したり、
そして御上に差し出すのが仕事。
これを決してキレイな仕事とは言えないだろう。
もちろん復讐のために銃を取ることも。
きれいごとではすすまないから面白い。
イタリア人のものの見方はアメリカ人とは違うし、
その音楽のつけ方も独特だった。
同じ小学校の同級生だったセルジオとエンニオは、
お互いの天才ぶりを知らずに仕事を始めて、
世界にその名を知らしめることとなる。
セルジオ・レオーネの迫力ある映像だけでなく、
その映像をもり立てる音楽、
これが強烈に世界中の人の心を惹きつけた。

外連味という点ではこの後の方が凄まじいが、
こちらは「確立」という点では、
見事にドル三部作の美学が詰まっている。

鳴かず飛ばずだったイーストウッド。
このスパゲッティ・ウェスタンへの出演は、
見事だったし賢明な判断だった。

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「続・夕陽のガンマン 地獄の決斗」 [ムービープラス]


続 夕陽のガンマン MGM90周年記念ニュー・デジタル・リマスター版 [Blu-ray]

続 夕陽のガンマン MGM90周年記念ニュー・デジタル・リマスター版 [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社
  • 発売日: 2017/11/03
  • メディア: Blu-ray


<ストーリー>
南北戦争の混乱の中、賞金稼ぎのブロンディーは賞金がかかった悪党と手を組んで荒稼ぎをしていた。そんな折、巷で話題になっていた20万ドルを盗み隠した男の死に際に出会う。たった一人隠し場所を訊いたブロンディー。だが彼の周りには軍隊、賞金稼ぎ、賞金首の男……それぞれの男たちの欲望が、友情と裏切りの狭間で死闘を繰り広げるのだった。果たして20万ドルは本当にあるのか? 最期に手にするのはいったい誰なのか……?

実はこのBlu-ray持っている。
山田康雄の吹き替え版も収録されていて、
私が買ったときは正規の価格だったけど、
今はプレミアがついている。
入手困難だから絶対に売りませんけどねw。 
ちなみにうちの円盤には「地獄の決斗」なんて副題はついていない。

で、今現在劇場で「ドル三部作4K版純次上映中。


映画秘宝 2024年 05 月号 [雑誌]

映画秘宝 2024年 05 月号 [雑誌]

  • 出版社/メーカー: 秘宝新社
  • 発売日: 2024/03/21
  • メディア: 雑誌



愛する「映画秘宝」にその特集がされていて、
「これは仰る通りに最後から遡って観なければ」と。

去年の暮れにムービープラスで、
ドル三部作を放映していたので録画済み。
もちろん本当は映画館で観たいけれど、
生憎ちょっと今事情が許さない。
と言うことで家で上映会実施。

やはりこの作品はセルジオ・レオーネも渾身の力で、
俳優も配役も演出も撮影も編集も全力投球。
モリコーネも最初は気乗りしなかったウェスタンも、
ここまで来るとかなりノリノリの雰囲気。

なんでこんなに面白いんだろうって思うけど、
何しろクローズアップの映像の迫力がすごい。
そして広い荒野を映したかと思えば、
生々しい殺戮の場面をまた仔細に描く。
今の映画よりダイナミックだなぁと思うのは、
おそらく生の映像でそれをやるから。
今のようにCGとかVFXと無縁だから。
要するに人間が生身で作った映画だから。
これがやっぱり一番の迫力なんだなぁと。

いや、トム・クルーズだって生身で頑張っているんだけどね。

確かに以前観た時には気付かなかったけど、
ブロンディーが最後にポンチョ姿で現れる。
「おお、ここからか!」
と言うことで遡って観なければ。
 
最近昔の映画の見返しが多いなぁ。
新しいものに興味がなくなるって、
認知症の始まりかもね。


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「世界で一番しあわせな食堂」 [ムービープラス]




世界で一番しあわせな食堂 [DVD]

世界で一番しあわせな食堂 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ギャガ
  • 発売日: 2023/01/11
  • メディア: DVD


【ストーリー】
フィンランド北部の小さな村にある食堂へ、上海から料理人チェンとその息子がやって来た。
恩人を探していると言うが、知る人は誰もいない。
食堂を経営するシルカは、チェンが食堂を手伝う代わりに、恩人探しに協力することとなる。
恩人探しが思うように進まない一方で、チェンが作る料理は評判となり食堂は大盛況。
次第にシルカ、そして常連客とも親しくなっていくチェンだったが、観光ビザの期限が迫り、帰国する日が近づいてくる―

ミカ・カウリスマキ監督作品。

音楽がなんとなく、
モリコーネの西部劇風。
で、フィンランドの田舎で中国料理。
ちょっと「かもめ食堂」風味。

とにかく登場する爺さんたちが最高。
最初は狭い社会の爺さんらしく、
ちょっと排他的で差別用語バンバンだったのが、
チェンの作る料理に魅了されていくと同時に、
どんどん態度が変わっていくし、
薬膳もあるから身体も調子が良くなっていく。
胃袋をガッツリ掴まれたら、
人間関係も万事OK。
妻、母を事故で失って失意の父子も、
気付けば地域の一員。
で、いつしか心が通い合ったりして。

ベタな展開なんだけど、
料理というエッセンスが加わると、
こうもほっこりと温かい雰囲気が増すものか。
個人的には包丁使いとか、
入っているものを観るだけで、
何ともいえない幸せな気分になるので、
「世界で一番しあわせな食堂」は看板に偽りなし。
フィンランドの美しい風景もとても良いエッセンス。
時折起こる事件はスパイス。

料理って言うのは、
文化であるのと同時に生活。
だから料理を作る家庭を見せられたり、
美味しそうに食べる様子を見せられると、
その場所の全てに触れられているような気になる。


兄弟でもこんなに違うのかって当たり前だけど、
兄貴の方は正統派。
それが良いんだなぁ。
素直でじっくりと煮込まれたスープみたいに染み渡る。
「ポトフ」と言い、
おいしい映画って良いねぇ。

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「荒野の用心棒」 [ムービープラス]




荒野の用心棒 完全版 製作50周年Blu-rayコレクターズ・エディション

荒野の用心棒 完全版 製作50周年Blu-rayコレクターズ・エディション

  • 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
  • 発売日: 2014/10/22
  • メディア: Blu-ray



これが今現在配信では観られない。
自分の環境では観られない。
と言ってお高いBlu-rayを購入するのも躊躇。

そうしたらムービープラスで疱瘡してくれた。
レンタル落ちDVDなんかより遙かに音質も画質も良いので、
これはもう永久保存版。

この映画の冒頭、
映像と音楽で釘付けになった人が多いのも納得。
モリコーネにとっては生活のための作曲。
それも予算がないからオーケストラは使えない。
そこで口笛、鞭の音、エレキギター、トランペットと、
それまでの映画音楽にはなかった音が登場。
その斬新さとアニメーションがスパゲッティ・ウエスタンの行き先を決めた。
後年この映画を観て、
セルジオ・レオーネとモリコーネは「最低だ」と笑ったそうだが、
今観れば確かに他愛もなく、
雑な作りも目立つ映画ではあるが、
何といってもセルジオ・レオーネとモリコーネの職人技、
どちらも今とは比較できないとはいえ、
やはり多くの人の心を惹きつけただけはある。

不遇の時代をこれで食いつないだイーストウッド。
時代の徒花とも言えるスパゲッティ・ウェスタン。
それはまるでヤクザ映画で食いつないだ東映と、
その所属俳優と監督たちのようではないか。 

「生きる」
「映画を作る」
「楽しませる」
その強烈なモチベーションがあってこそ、
こうした映画は独特の力を持ち合わせる。
60年経とうとその訴求力は変わらない。
今も輝き続ける徒花だからこその美しさ。


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「アラビアのロレンス 4Kレストア版」 [ムービープラス]




アラビアのロレンス(Mastered in 4K) [Blu-ray]

アラビアのロレンス(Mastered in 4K) [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2013/12/20
  • メディア: Blu-ray


1914年、第一次世界大戦が勃発し、アラビアはドイツと結んだトルコ帝国の圧政下にあった。英国は、ドイツ連合軍の勢力を分散させるため、稀代の天才戦略家ロレンスをアラビアに派遣する。
アラビ王族のファイサル王子の軍事顧問となったロレンスは、ハリト族のリーダー、アリや黄金を探し求めるアウダらとともに、
独自のゲリラ戦法を駆使して反乱軍を指揮し、アラブ国民から砂漠の英雄とうたわれるようになる。
だが次第に自分が軍上層部に利用されていることを知り、アラブ民族もまた、部族間の対立からロレンスを裏切っていく・・・。

現在勃発中のイスラエルによるガザへの攻撃。
その発端となったのははるか100年以上前、
ロレンスがアラビアで様々な画策を行った裏で、
イギリスが二重にアラブともイスラエルとも「独立」を保証する契約をしていた。
オスマントルコが崩れ去った後、
残ったのはアラブはアラブの立国を主張する一方、
イスラエルはドイツが莫大な賠償を負ったことから、
不景気と憤懣やるかたない生活苦によりヒトラーが政権を奪取、
ヨーロッパを次々と攻撃して併合、
その結果ヨーロッパのユダヤ人はホロコーストで大量殺戮、
しかし彼らはそれがゆえにシオニズムがより一層強くなり、
戦後イギリスの支援もあって独立。
けっかイスラエルの中にアラブ人居住区が残され、
今となってはガザのみとなったイスラエル内のアラブ人居住区に、
イスラエルは「出ていけ」と攻撃を仕掛ける。

中学生くらいの時に、
一度TV放映されたのを見たことがあるが、
フルで通してみたことがなかった。
この手の映画が放映されると、
とりあえずは録画しておく癖がついているので、
今回もレコーダーの中から発掘。
「4Kレストア完全版」の長尺227分だった。

最初に見たときは何の予備知識もなかったので、
何もわからずに見ていたが、
とりあえずイギリスが裏切ったことは分かった。
それが故にアラブは部族ごとの対立を解消できなかったということ、
自分の仕事に失望したロレンスが、
殆ど自殺的な行為による事故で死んだこと、
映像がとんでもなく美しかったこと、
その程度のことしかわかっていなかった。

一応私もただ漫然とぼーっとして年を重ねたわけではないので、
その後ロレンスについて調べたこともあった。
おおよそはうわさや推測の範囲として耳にしたものだったが、
ロレンスはおそらくゲイであったとか、
英雄として描かれているようではあるが、
実はロレンスもイギリスに利用されただけであるとか、
おおむね否定的なものだった。
実際映画の中でも直接的には描かれないが、
ロレンスが異様な自信家であるのと同時に、
非常に繊細な神経の持ち主でもあり、
それがゆえにアラブの部族長たちと渡り合えたし、
大胆な作戦でオスマントルコとを攻撃できたともいえる。
そしてこれは極めてひそやかに描かれるが、
彼が拷問を受けているときに快感を感じていることや、
トルコ兵たちから性的暴行を受けたとされている。
これは後日ロレンスによる真っ赤なウソとわかるのだが、
マゾヒズムの傾向があったことは確からしい。
もっともその後に彼がトルコ軍に対して行った血まみれの所業も、
そういう裏付けでもなければ許されるものではなかったのかもしれない。
まぁいい歳のババァになれば、
こんな暗喩も簡単に読み取れるようになるわけで、
きわめて優秀な情報将校だったかもしれないが、
彼のエキセントリックな性格と、
それに輪をかけることとなるこの経験が、
彼ののちの人生をつぶしたことも想像に難くない。

とにかく映像は素晴らしい。
今どきの日本では非常に限られるが、
これは70mmを上映できる劇場がふさわしい。
こんな映画を1962年に作っていたのだから、
世界というのは広いし恐ろしい。
一方の日本では白黒の「十三人の刺客」である。
ただしこちらはこちらで素晴らしい映画ではあることは間違いない。

そもそも事情が分かっていて見ると、
イギリスの帝国主義の罪深さと、
それに利用されて英雄に祀り上げられたロレンスの哀れさ、
これがとんでもなく腹の立つ話であり、
かつとんでもなく悲壮な英雄の物語である。
まるで人工物のように端正なピーター・オトゥールの顔を見ながら、
きわめて冷徹に物語を眺めていた私に、
何一つ感動は湧き上がってこなかった。

「風と共に去りぬ」もそうだが、
制作された当時の状況や価値観と今は違う。
だからどんな名作だとされる物語も、
今見ると感動するとは限らないし、
かつ名作と感じることも認めることはできても、
感動したり感情移入できるとは限らないのだ。

「There will be blood」

大好きな映画の題名だが、
ロレンスの運命もまたそうだったのだ。

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「時計仕掛けのオレンジ」 [ムービープラス]






近未来のロンドンで、クラシック音楽を愛する少年は、仲間たちと共に暴力とセックスに明け暮れる日々を送っていた。そんな中、彼はある殺人事件をきっかけに逮捕されてしまい、残忍な人格を矯正するという名目の奇妙な治療法の被験者となる。

何といっても50年も前の作品だから、
映画好きとしては伝説として、
折りにつけ話を聴くし、
いろいろな意味での問題作と認識していた。
もちろんキューブリックという監督の問題も。
それだけに迂闊に手出しができないというか、
若い頃に再映に恵まれなかったので、
ついぞ後回しにし続け、
「もはや見なくても良いのではないか?」
そうも思い始めたところで。

今と言うときで良かったのだと思う。
これはハッキリ言えば若い頃には受け止めきれない、
或いは曲解するか誤解するか、
悪い方向に自分が行っていた気がする、
そして70年代という時代の錯誤はあるが、
その映像も台詞も音楽も、
決してクラシックなどではなくて、
今も昔も変わらぬ傑作だと思う。
それほどまでに色褪せない力に満ちている。

ストーリーは何も言う必要はないだろう。
とにかくキューブリックの映像に対するセンス、
色の使い方はそのインパクトの強さ、
逆に色がない人々の荒廃した心の吐き出し、
暴力に対する報復の仕方、
やっていることは非道なのだが、
何処かに品を感じると言うか、
ただのやさぐれた人間の所業ではないところ、
それがこれをとんでもない映画にしている。
演技の演出も含めて、
俳優陣の顔ぶれもまたその色を強める。

50年経っても新しいとはこのことか。

自分が物心ついた頃の映画が、
今やクラシックになっているのだが、
「世界サブカルチャー史」に登場したような映画は、
古びるどころか、
当時最先端であった以上に、
今もなお燦然と輝き続ける名作でありながら、
それをクラシックと呼ぶことが憚られるほどに、
時代を超越した作品となっている。
それも見返す度に新鮮であり、
とんでもなき衝撃を常に与え続ける。
今のようにCGなどはない時代、
人間が作り得た技術の限界がありながら、
だからこそ作り得た作品の持つ力は偉大だ。

この時代は犯罪者、精神障害者の矯正を取り扱った作品があった。
その時代を経て、
今は矯正ではなく共生を模索する時代。
この映画のクライマックスまで事前に知っていたからこそ思うのだろうか、
結局のところ矯正ではなくて、
「そういうものだ」と受け入れることが寛容なのかもと思う。
特に高齢化社会に突入した今、
海馬の働きによって感情の抑制ができにくい老人は、
矯正したり争うのではなく、
彼らの価値観の中で彼らなりの生き方を、
世間が受け入れないと社会が成立しない気がしている。

制作から50年後の今。
若者の無軌道ではなく、
暴走老人の無軌道をこの映画から考えるとは。

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「アメリカン・グラフィティ」 [ムービープラス]


アメリカン・グラフィティ [Blu-ray]

アメリカン・グラフィティ [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ジェネオン・ユニバーサル
  • 発売日: 2012/05/09
  • メディア: Blu-ray



何の説明も要らないルーカスとコッポラの名作。
こうした名作というのは、
観る機会を逸してしまうと、
なぜかその後ずっと忘れてしまう。
これもそのうちで、
何と今の今まで観たことがなかったのだ。
なぜなら日々新しい映画が公開され、
日々新しい映画がメディア化されたりサブスクで公開される。
おまけにWOWOWでも放送するのだから、
普通にサラリーマンをしていると後回しが必然的に多くなる。
「世界サブカルチャー史」で観て、
「あ、観なくちゃ、観たいぞ」と思ったら、
ナイスタイミングでムービープラスで放送。

何ともいえず甘酸っぱい。
オールディーズがずっと流れ続け、
その全部を知っているし口ずさめる。
巣立っていく若者たちの一夜の饗宴。
もちろんあの時代を切り取っているのだが、
それがちっとも古くさくないし、
映画としての質の高さが興味を失わせない。
ルーカスとコッポラ、
ここから時代を作る二人のタッグは、
確かに時代を切り取って時代を映し出し、
それがアメリカの一つの文化になった。

最近古い映画を振り返るのだが、
名作と言われるものはやはり面白い。
そして時代に関係なく良いものは良いし、
世界に入り込んでしまうのはさすが。
そして後のスターの宝庫であることもあり、
原石のちょっとした光が楽しめる。

彼らのその後がなかなかに切ないが、
若さの輝きがまぶしい作品はどこか胸にせまる。


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「真夏の夜のジャズ」 [ムービープラス]




真夏の夜のジャズ 4K修復版 Blu-ray

真夏の夜のジャズ 4K修復版 Blu-ray

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
  • 発売日: 2021/08/04
  • メディア: Blu-ray


<解説>アメリカ合衆国の東北部に位置するロードアイランド州ニューポート市で開催された「ニューポート・ジャズ・フェスティバル(Newport Jazz Festival)」――1954年から現在も続く、伝統ある恒例の夏フェス――
本作は1958年7月3日から6日まで、真夏に開催された第5回フェスと、同時期に開催されたアメリカズカップの模様を撮った“熱い“ドキュメンタリーである。
<キャスト(演奏者)>ルイ・アームストロング セロニアス・モンク アニタ・オデイ チャック・ベリー
ジミー・ジュフリー ソニー・スティット ジョージ・シアリング ダイナ・ワシントン
ジェリー・マリガン ビッグ・メイベル・スミス チコ・ハミルトン
マヘリア・ジャクソン

以前から観たかったライブ映像。
WOWOWでは放送してくれないなぁと思っていたら、
大穴でムービープラスが放送してくれた。

サッチモ、セロニアス・モンク、チャック・ベリー、マヘリア・ジャクソン。
もうこれだけでも夢のようなライブ。
大御所の即興性がめちゃくちゃ楽しめる。

野暮な文句は要らない。
演者、観客共に幸福で満足そうな表情。
それだけでこの映像が如何に素晴らしいものか、
充分にわかるし堪能できる。

ずっと見所が続くので、
全く無駄のない時間。
最高の時間と至高の演奏と歌。
観ないで聴かずに死ねるか!

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「ホテル・アルテミス」 [ムービープラス]




ホテル・アルテミス ~犯罪者専門闇病院~ [DVD]

ホテル・アルテミス ~犯罪者専門闇病院~ [DVD]

  • 出版社/メーカー: ギャガ
  • 発売日: 2020/12/02
  • メディア: DVD


【ストーリー】
<ホテル・アルテミス>そこは、高額な会費を支払うことのできる限られた犯罪者だけが利用できる会員制闇病院…。ルールは3つ。<1.武器の持ち込み禁止、2.警官の立ち入り禁止、3.他の患者を殺してはいけない。> 高額な会費と引換えに最新の医療と身の安全が保障されるその場所では、看護師のジーニーと護衛のエベレストが働いていた。街は暴動が日常化し、ホテルには傷を負った犯罪者たちの訪問が後を絶たない…。そんなある日、銀行強盗を犯し致命傷を負った兄弟が<ホテル・アルテミス>を訪れたことをきっかけに、開業以来最悪の事態を迎えることになる…。

最高の役者と最高のシチュエーション。
特にジェフ・ゴールドブラムとジョディ・フォスターのシーンは、
息詰まる緊張感と感情の揺さぶり。

なのになぜにこんなB級アクション映画に? 
 
犯罪者専門の病院という設定は良い。
犯罪者専門のホテルが別作品には存在するのだから。
ジョディ・フォスター演じるナース。
彼女は医者で患者を最新技術で治療するのに、
なぜに「ドクター」ではなく「ナース」と呼ばれるのか?
なぜに彼女は犯罪者専門の病院で仕事をするのか。
鉄の掟があるホテル・アルテミスで、
なぜ彼女はその掟を破ることを選ぶのか。

どれもエピソードの描き方が中途半端で、
どれも観る側の感情移入にまで至らない。
演技は堅い俳優ばかりなので、
編集と演出でこれだけ緊張感が出ないものか。

それにしても、
すっぴんのジョディ・フォスターの潔さ。
5年ぶりの銀幕復帰でこの役を選ぶとは、
実に彼女らしいと言えば彼女らしい。
小柄で音楽を聴きながらヒョコヒョコと歩く、
そんなナースの役作りはさすが。
私にとって理想の女性であり、
最高の女優である彼女の歳の取り方は、
予想を遙かに超える女優魂の塊だったと思う。

アンチ・アンチエイジング。
悪くはない。

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