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「アシュラ」 [ストリーミング]


アシュラ [Blu-ray]

アシュラ [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2017/07/21
  • メディア: Blu-ray


[STORY]
堕ちていく2人の男、権力にしがみつく狂気、そして、歪んだ正義を貫く鬼。
欲望に駆られた男たちの生き残りを賭けた闘いが始まる―
アンナム市の刑事ドギョン(チョン・ウソン)は、街の利権を牛耳る市長ソンベ(ファン・ジョンミン)のために裏の仕事を引き受けていた。
しかし、市長の逮捕に燃える検事チャイン(クァク・ドウォン)がドギョンを脅し、市長の不正の証拠を掴もうと画策。
事態はドギョンを慕う刑事ソンモ(チュ・ジフン)をも巻き込み、生き残りを賭けた欲と憎悪が剥き出しの闘争へとなだれ込んでいく。

韓国ノワールここに極まれり。
ここまで腹黒い悪い奴らが集結すると、
本当にどこまでも救いがなくなる。
だけどいつもの権力闘争をする韓国ノワールとどこか違う。
根本的に何かが違う。

と思っていたら、
エンディングテーマが流れ始めたときに、
その理由がわかった気がする。
つまりこれは悪徳保安官が街を支配する西部劇、
そこで甘い汁を吸いながらも、
二重スパイのような立場に立たされ、
結果として街全体が破滅に向かっていく、
韓国式現代版西部劇だったのだ。

そう考えると、
それぞれの人物の立場や役割がわかってくる。
通常の韓国ノワールよりもなお、
最後の最後まで全く救いのないストーリーは、
あの葬儀場を出れば、
街も警察も検察も浄化されたことを示しており、
あの街の未来が明るいことを示している。
もちろんそんなことは微塵も感じさせない、
血みどろで死体累々のクライマックスではあるが。

想ったほどに陰惨さを感じさせないのは、
とにかくどいつもこいつもなりふり構わない、
とんでもないワルばかりだからだ。
良心のかけらが微塵も見えないところがむしろ清々しい。

私の好きな韓国ノワールとちょっとテイストは違うが、
こういう話も好きw。

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「永遠の門 ゴッホの見た未来」 [ストリーミング]


永遠の門 ゴッホの見た未来 [DVD]

永遠の門 ゴッホの見た未来 [DVD]

  • 出版社/メーカー: 松竹
  • 発売日: 2020/06/03
  • メディア: DVD


【ストーリー】
パリでは全く評価されなかったゴッホは、「新しい光を見つけたい」と南フランスのアルルへ向かう。どこまでも続く大地、風になびく麦の穂や沈みゆく太陽を見つめるゴッホは、「永遠が見えるのは僕だけなのか」と自身に問いかける。そんな中、パリからやって来たゴーギャンに心酔するゴッホだったが、共同生活は長くは続かなかった。孤独を抱えて、ひたすら自らが見た世界をカンバスに写し取るゴッホは、やがて「未来の人々のために、神は私を画家にした」と思い至る。晴れ晴れと穏やかなその瞳が最期に映したものとは――。

劇場公開時から観たかった作品。
ウィレム・デフォーがゴッホにしか見えないほどに、
憑依されたかのように思えたから。
彼の死についても病気についても興味があった。

結論。
彼は早すぎた天才であり、
世間から評価されないこと、
友人の成功で自分の存在を見失いながら、
それでも絵筆を持つことで自画を保ち、
とことん運に見放された人生だったと言うこと。

ただそれは他者から観た評価であり、
本人が不幸だったかと言えばそうでもないと思う。
もちろんいろいろなことで絶望は味わっただろう。
しかしその中にも彼は自分の絵に対する姿勢は保ち続けたし、
精神病院でも決して彼は不幸な監禁生活ではなかったと思う。
そして彼はやはり天才であるが故、
絵筆を握ることで世界を忘れてしまい、
その世界に浸ることができたのだ。
それこそが他者からすれば最も不幸なことであり、
本人からすれば最も幸福なことであった。

だから彼は永遠の門を見つけられたし、
そこに迎え入れられたのだと思う。
父親が聖職者だった影響もあるだろう。
彼が自然をそのままに受け入れ、
自らの心に映ったままに表現し、
世間の評価辛味はなされながらも表現し続けたのは、
永遠を観ることが出来たからなのだ。

この当時の芸術家の人生は、
これが不幸だったのか幸福だったのか、
当たり前だったのか異端だったのか、
それすらわからない。
そして彼の死の謎についてもまた同様。

ただ一つ。
彼は紛うことなき天才であり、
不遇の天才であった。
しかしそれは他者からの評価に過ぎない。
本人は何を思っていたのか、
今となっては知る術はない。

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「家族を想うとき」 [ストリーミング]


家族を想うとき[Blu-ray]

家族を想うとき[Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2020/06/17
  • メディア: Blu-ray


内容(「Oricon」データベースより)
イギリス、ニューカッスル。ターナー家の父リッキーはマイホーム購入の夢をかなえるため、フランチャイズの宅配ドライバーとして独立を決意。母のアビーはパートタイムの介護福祉士として、時間外まで1日中働いている。家族を幸せにするはずの仕事が家族との時間を奪っていき、子供たちは寂しい想いを募らせてゆく。そんな中、リッキーがある事件に巻き込まれてしまい…。

町山さんが紹介したときから、
どうしても観なくちゃいけないと思いつつ、
とうとうストリーミングまで観られなかった痛恨の一作。
ケン・ローチ監督が引退を撤回してまで描きたかった、
世界中で起こっている働き方と家族の問題。

世界中で宅配ドライバーの恩恵にあずかっていない人間はいないだろう。
しかしそこにある働き方は、
金を得るためには朝から晩まで働き、
家族を幸せにするためには家族を犠牲にし、
仕事に穴を空ければクズだカスだと言われる。
フランチャイズ制で一国一城の主のようだが、
そこにあるのは単なる請負ドライバーの地獄。
介護職の妻もまた、
良心的であればあるほど追い詰められる。
二人の苦悩は子供たちにも伝播し、
思わぬ事件に巻き込まれてしまい・・・。

「わたしは、ダニエル・ブレイク」も本当に切なかったが、
この映画も切ない。
何が切ないと言って、
どちらも悪人はいないし、
誰もが自分達の責任を果たそうとしているだけなのだ。
けれどその責任を果たしたところで、
誰一人幸せになれない。
誰一人満足のいく思いが得られない。
そしてそれが世界中に蔓延している。
その現実はどうにも救いようがないし、
搾取されている事実は変わらない。
やるせない思いが残るだけ。

コロナ禍でハッキリした世界の「人を想う力」。
その根本がここにあるような気がする。
イギリスはかつて「ゆりかごから墓場まで」という福祉国家だった。
それをサッチャー時代の政治が変えてしまい、
今ではケン・ローチが描く映画の世界が現実だ。
日本は福祉国家であったことはないが、
それでも少なくとも「和」があり「輪」があり、
その中で助け合う心意気があった。
今は他人のその心の広さを分け与える余裕がない。

とことん救われない話である。
原題「Sorry,We missed you.」。
不在通知の言葉だが、
「申し訳ないけど、貴方がいなくて私たちはさみしい」とも訳せる。
1日14時間週に6日働く父親に、
家族が向ける言葉にも思える。
そんな働き方で誰が幸せを買える?
人間性をとことんまで切り詰めた働き方と生活で。

コロナ禍で医療従事者やその家族を差別する。
或いはリモートワークできないエッセンシャルワークの人たちを差別する。
そんな時代に未来など来ない。
なんという世界になってしまったのか。

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