「また、本音を申せば」 [本]
名作映画「この世界の片隅に」をみながら疎開体験を苦く思い起こし、終戦の日々を書き残す。大病から生還し、青春時代から愛読した太宰治や、坂口安吾の長編ミステリを読み返す。久しぶりに書店へ行って最新海外ミステリを選ぶ楽しみ―。「週刊文春」で『人生は五十一から』連載が始まってから21年。途中でタイトルが『本音を申せば』に変わっても、面白い本も映画も、東京の思い出も尽きない。
2017年4月、脳梗塞で入院した顛末は、『生還』(2019年3月刊)に詳しい。本書は、2017年から2019年、足掛け3年にわたるクロニクルである。
「生還」は闘病記だったから、
クロニクルエッセイは何年ぶりか。
毎度読んでいて思う。
「ああ、小林信彦さんの文章は本当に気持ち良い」
脳梗塞を患ったものの、
神様は小林信彦氏に利き手を残してくれた。
おかげでこうしてまた文章を楽しめる。
病気もあって外で映画を観ることはかなわないが、
TVとメディアで楽しんで語ってくれる。
ラジオの話もいつも通り。
年齢も年齢なので、
病気をした跡でもあるので、
同じコラムを昔と同じように書くのは大変だろうが、
それでもファンの心を満たしてくれる。
今回はミュージカル映画への思いが語られる。
私はミュージカル映画は好まないが、
それでも黄金時代、名作ミュージカルの話は楽しい。
何よりも楽しんで筆を滑らせているのがわかる。
1年に1冊のクロニクルエッセイではなくなってしまったが、
こうして新刊で読めることが嬉しい。
(それなら週刊文春を読めとと言われるだろうが)
週刊誌ではなく1年に1冊、
春に出ると言うこのローテーション、
また復活してこれからも続けてもらえれば、
こんなに嬉しいことはない。
この文章の小気味よさは、
ついついページを繰らせる魅力がある。
2020-06-18 20:58
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