SSブログ

「家族を想うとき」 [ストリーミング]


家族を想うとき[Blu-ray]

家族を想うとき[Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2020/06/17
  • メディア: Blu-ray


内容(「Oricon」データベースより)
イギリス、ニューカッスル。ターナー家の父リッキーはマイホーム購入の夢をかなえるため、フランチャイズの宅配ドライバーとして独立を決意。母のアビーはパートタイムの介護福祉士として、時間外まで1日中働いている。家族を幸せにするはずの仕事が家族との時間を奪っていき、子供たちは寂しい想いを募らせてゆく。そんな中、リッキーがある事件に巻き込まれてしまい…。

町山さんが紹介したときから、
どうしても観なくちゃいけないと思いつつ、
とうとうストリーミングまで観られなかった痛恨の一作。
ケン・ローチ監督が引退を撤回してまで描きたかった、
世界中で起こっている働き方と家族の問題。

世界中で宅配ドライバーの恩恵にあずかっていない人間はいないだろう。
しかしそこにある働き方は、
金を得るためには朝から晩まで働き、
家族を幸せにするためには家族を犠牲にし、
仕事に穴を空ければクズだカスだと言われる。
フランチャイズ制で一国一城の主のようだが、
そこにあるのは単なる請負ドライバーの地獄。
介護職の妻もまた、
良心的であればあるほど追い詰められる。
二人の苦悩は子供たちにも伝播し、
思わぬ事件に巻き込まれてしまい・・・。

「わたしは、ダニエル・ブレイク」も本当に切なかったが、
この映画も切ない。
何が切ないと言って、
どちらも悪人はいないし、
誰もが自分達の責任を果たそうとしているだけなのだ。
けれどその責任を果たしたところで、
誰一人幸せになれない。
誰一人満足のいく思いが得られない。
そしてそれが世界中に蔓延している。
その現実はどうにも救いようがないし、
搾取されている事実は変わらない。
やるせない思いが残るだけ。

コロナ禍でハッキリした世界の「人を想う力」。
その根本がここにあるような気がする。
イギリスはかつて「ゆりかごから墓場まで」という福祉国家だった。
それをサッチャー時代の政治が変えてしまい、
今ではケン・ローチが描く映画の世界が現実だ。
日本は福祉国家であったことはないが、
それでも少なくとも「和」があり「輪」があり、
その中で助け合う心意気があった。
今は他人のその心の広さを分け与える余裕がない。

とことん救われない話である。
原題「Sorry,We missed you.」。
不在通知の言葉だが、
「申し訳ないけど、貴方がいなくて私たちはさみしい」とも訳せる。
1日14時間週に6日働く父親に、
家族が向ける言葉にも思える。
そんな働き方で誰が幸せを買える?
人間性をとことんまで切り詰めた働き方と生活で。

コロナ禍で医療従事者やその家族を差別する。
或いはリモートワークできないエッセンシャルワークの人たちを差別する。
そんな時代に未来など来ない。
なんという世界になってしまったのか。

コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。