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「枯れ葉」 [映画]



【STORY】
北欧フィンランドのヘルシンキで、アンサは理不尽な理由から仕事を失い、ホラッパは酒に溺れながらもどうにか工事現場で働いている。ある夜、ふたりはカラオケバーで出会い、互いの名前も知らないまま惹かれ合う。だが、不運な偶然と現実の過酷さが、彼らをささやかな幸福から遠ざける。果たしてふたりは、無事に再会を果たし想いを通じ合わせることができるのか…? 

お待ちかねの「枯れ葉」。
めちゃくちゃ寒い冷たい雨の中、
シネコヤまで出かけて参りました。
でも行き帰りとも、
バスと電車の接続も良くて、
殆ど最短タイムで往復時間が済んでラッキー。

カウリスマキで泣かされた。
「哀愁(君の名は)」+「めぐり逢い」なのに、
独特のユーモアとその繊細な感情表現に、
最期号泣とは言わないけれど予想外に泣いた。

引退前と復帰前、
もちろんブランクがあるから同じ俳優は使えない。
だけど今回の俳優はちょっと今までとは少し違って、
それは彼女の特性でもあるだろうし、
彼女が照らし出す明かりのようなものでもあり、
ものすごくそれが画面を観る側の拠り所にもなる。
それほどに無表情が殆どの中で見せる、
彼女の笑顔はとてもチャーミングだった。

ともすれば「病葉」になってしまう寸前の二人。
惹かれ合って近づきながらも、
男のアルコールが二人を遠ざけてしまう。
「うつだから飲み過ぎる」
「飲み過ぎるからうつになる」
このコロンブスの卵のような言い訳、
依存症の言い訳にはありがちで、
そこから離脱するための苦しみを避ける言い訳。
カウリスマキの映画に登場する男にありがち。

そして背景として折に触れて流れるラジオ、
内容はロシアのウクライナ侵攻に関するニュース。
気が滅入るような戦争のニュースと、
どんどん職を失って落ちていく生活に反して、
アンサの身にまとう服の明るさとおしゃれな色に目を惹かれ、
その対比に何やら逆に不穏なものさえ感じる。
色彩の美しさに救いを感じながらも、
現実の暗さがより一層迫る。

「病葉」になりかかった男が、
女の言葉で一念発起。
まだまだ苦労は続くだろうが、
なんとか色鮮やかな「枯れ葉」となって前に進む。
そのわずかでも明るい未来が垣間見えること。
そのこと自体が何と幸せなことか。

つくづくカウリスマキはロマンチストだ。
だけどフィンランドはロシアの隣国、
もしかしたら彼が復帰したのは、
ウクライナ侵攻と無縁ではないのかも知れない。
そしてカウリスマキの中で一番と言えるロマンチストぶりと、
最後に感じさせる希望と未来には、
「諦めるな、戦い続けろ、もがき続けろ」
そんなメッセージも感じられた。 
 



余談。
ウクライナがなぜ降伏しないのか。
圧倒的不利だとわかっていて、
なぜ彼らは不屈の精神を持ち続けられるのか。
それは長い長い歴史があるから。
ウクライナはせっかく手にした独立を、
武力と暴力によって手放すわけには行かない、
因縁の長い長い確執と弾圧の歴史があるから。

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