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「浮き雲」 [Amazon Prime Video]

再就職への道 ― 映画「浮き雲」に見る失業から再就職へのプロセス ― 

面白い記事を見つけました。
私としては「描かれなかった部分を描いた『かもめ食堂』」って感じ。

おそらくカウリスマキ監督作品としては、
比較的感情表現が豊かな部類。
それはやはり失業からどん底を味わって、
最終的にはつかみ取る未来への希望があるから、
そこに付随する感情表現が最低限必要だったから。
他の作品はどちらかと言えば、
どん底からの希望なんだけど、
この作品は丹念に失業後の甘い見通しからの、
完全なる失望とどん底の気持ち、
どうしたら自分たちを変えられるのか煩悶して、
何とか意地で職場を自ら作り上げ、
今までの経験と地道な努力から作り上げた、
美味しい食事が客の胃袋を掴んでやがて迎える大団円。
自分が思うにはカウリスマキ間時作品の中でも、
とんでもなくハッピーで演劇的映像的作品。

ティピカルとは言いながら、
失業からの男の楽観的な再就職への希望と失意。
これがもうどうにもこうにも情けない。
これが描きたくてこの映画を作ったのではないかと思うほど。
大体においてカウリスマキの描く男は情けなくて、
社会の敗者であり弱者であるのだけれど、
それが一念発起して意味もなく突っ走って、
けっきょく元の敗者の位置に戻るんだけど、
気持ち的には自分と言う存在が変わっている。
そういう情けなさを今回「これでもか」と叩き落として踏みつぶし、
一方同じ失業者の妻は様々な思いをして、
経験をしながら同じように失望しながら、
結果的に信じられるものが何なのかをつかみ取って、
自分も夫も昔の仲間も幸せにしてしまうバイタリティを発揮。
「マッチ工場の少女」で虐げられて絶望して怒って、
凶行に及ぶ女性とは全く違う方向性。

いよいよシネコヤで「枯れ葉」が観られる日が近づいている。
敢えて早く観ることではなく、
「シネコヤで観る」と言うことにこだわった結果、
Amazonプライムビデオで無料で観られるカウリスマキは全部観たし、
Blu-rayセットも買えたので、
いろいろ準備と復習ができたラッキーな時間になった。

カウリスマキと言う人は、
本当に人間が好きなんだなぁと思う。
人間が決して完全なものではないから、
生活には浮き沈みがあって、
人生は長くつらいトンネルもあるから、
人間として輝くし人間として美しい。
その気持ちをごく自然な存在の人間として描き、
シニカルでつらい状況であっても、
どこかおかしい人間味を見せることで人を笑わせて幸せにさせる。
やっぱりこんな人が引退しちゃいけないと思う。
兄のミカ・カウリスマキも描写や表現は違うけれど、
人間が好きだし人間の機微が楽しいと思っている。
この兄弟は手法は違うし表現は違うけれど、
人間のおかしみと愛すべき側面を描写し、
人間賛歌を描き出しているのは同じなのだ。

さぁ「枯れ葉」。
ほぼほぼ「素晴らしい」以外の事前評は聴いていない。
それが自分にはまるかはまた別問題だけど。

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