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「コカイン・ベア」 [Amazon Prime Video]




コカイン・ベア (字幕版)

コカイン・ベア (字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2023/12/06
  • メディア: Prime Video


まさかの実話!?クマがコカインを食べちゃって大暴れ!
全米でバズりまくったワイルド・パニック・アドベンチャーがついに日本出没!

実は去年劇場で気になっていた。
けっきょく優先順位で落としたけれど。
で、アマプラ無料ということで早速。

えーっと、
端的に言うと要素が多すぎ。
多すぎてどのジャンルにも入らない映画。
コメディだしスリラーだしシリアスだし親子愛だし。
親子愛に至っては人間も熊もw。
その上登場人物がやたら多くて、
いろんなことが入り組んでいる。
要するにわかりやすいB級ムービーだ。
「さぁ店は開いたし商品は並べました。 
 お好きなものをどうぞ」というわけだ。

と言うことで、
今一つコカイン・ベアは怖くないし、
おつむの軽い若者やら、
しょーもないレンジャーだの観光客だの、
もともとのきっかけを作ったボスだのその手下だの、
またそいつらに絡んだ事情だの、
更には地元のシングルマザー親子とその友達だの、
要素が多すぎて散漫なのだ。
脚本、演出の意図がわからない。
何を一番描きたいのか。
残念ながらあれもこれもでは受け取る側も混乱する。

もしコカイン・ベアの恐怖にフォーカスしていたら、
と言うかそれを期待していたので、
もっと面白かったんじゃないかと思うのだが、
さすがにそれだけでは1時間半以上もたないのか。
いくら実話とは言え所詮は映画。
そんなものいくらでも作りようがあるのだが。

お気楽に見るには良い映画だが、
飯を食いながら見るものではない。

ちなみに本作はレイ・リオッタの遺作。
思いがけないところで彼を見られて、
すでにおそらくはかなり体調が悪かったであろう、
その表情と顔つきにちょっと哀しくなった。

ともあれあの独特の存在感、
レイ・リオッタの魂に乾杯。

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「ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言」 [Amazon Prime Video]




ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言 (字幕版)

ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言 (字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2023/05/05
  • メディア: Prime Video


ヒトラー率いるナチス支配下のドイツ"第三帝国"が犯した、人類史上最悪の戦争犯罪"ユダヤ人大量虐殺【ホロコースト】"を実際に目撃した人々。武装親衛隊のエリート士官から、強制収容所の警備兵、ドイツ国防軍兵士、軍事施設職員、近隣に住む民間人まで、終戦から77年を迎える今、「現代史の証言者世代」と呼ばれる高齢になったドイツ人やオーストリア人など加害者側の証言と当時の貴重なアーカイブ映像を記録した貴重なドキュメンタリー

「最後の証言」 
いろいろとダークなドキュメンタリーやら、
ドキュメンタリータッチの映画を観ていたら、
これがオススメにあがってきた。
そういえば確か2年くらい前に、
「たまむすび」で町山さんが紹介していたなぁと。

ドイツは第三帝国、ナチスの所業を教えて、
その陰惨で情け容赦ないホロコーストを繰り返さないように、
教育を徹底していると聞いていた。
それに引き換え日本は情けないなぁと思っていた。
しかしどこの国でも、
存外様子は変わらないもののようである。
SSに所属してユダヤ人を殺していた当人たちは、
「ただ命令されていたからやっただけ」
「何をやっているかなど考えてもいない」
「囚人のユダヤ人の歯医者さんに治療してもらったわ。 
 ええ、彼は死んだわ。」
深く後悔の言葉を口にする人も言えば、
ただ昔の思い出のように、
ただ昔の出来事の様に語る人もいる。
そうかと思えば、
「知らなかったわ。 
 何が行われているかなんてSSが引き上げるまで、 
 アメリカ兵がやってくるまで知らなかった。」
そう証言する人までいた。
しかし彼女は周囲の人に言われる。
「知っていたんでしょ? 
 知らないなんてことはないわ。」
そしてホロコーストの悲惨さを若者に語ると、
若者は「そんなことを言わないでください。」
「あなた方は立派な人たちです。」
「そんな風に言うなんて反ドイツですよ。」

なんだか何処かで聴いたような話だ。
ちょっとでも戦時中の日本軍の行為を批判すると、
「反日だ!在日だろう!」と言われ、
それが事実かどうかではなく、
感情で「なかったもの」として日本という国を肯定する。
まぁ確かに目のまで自国を否定されたら、
そういう風に言いたくなるものなのかもしれない。

ただ面白いことに、
最初はしおらしく反省の言葉を口にしていた人が、
途中から正当化するかのように自己弁論を始める。
けっきょくみんな自分が可愛いし、
自分がやったことが恐ろしいから正当化したい。
じぶんのせいじゃない。
みんなやっていたことだ。

「だって肉が焼ける匂いがするからわかるでしょう」
肉が焼ける匂いは強烈で特別らしい。
その匂いや異様な音になれていく毎日。
今月末後悔される映画、
「関心領域」でも描かれる日常の恐ろしさだ。

日本でも戦場を語る帰還兵は少ない。
どんなことをしていたのか、
家族にはとても聞かせられずに墓場まで持っていく。
でもそれは決して褒められた話ではない。
例え国家が命じたことであっても、
やってしまったことはやってしまったこととして、
或いは国家だからこそ犯した罪として、
語り継いで繰り返さない努力は必要だ。



ネタニヤフはホロコーストを経験していない世代である。
親の世代は経験していても、
彼自身はホロコーストを直接知らない。
世界中で語り継がれているホロコーストを、
彼は今ガザでパレスチナに対して行っている。

人類とは何と愚かなものか。
この現実と核を作り出したことを思えば、
人類が自滅する日は近いのかもしれない。
反省もせず、自らを律することもできなければ、
その日はそれほど遠くはないだろう。

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「帝銀事件 死刑囚」 [Amazon Prime Video]


帝銀事件 死刑囚

帝銀事件 死刑囚

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2021/09/24
  • メディア: Prime Video


1948年1月26日、東京都衛生課員を名乗る男が、行員16人に青酸化合物を飲ませて12人を殺害。無惨な大量毒殺事件は、平沢貞通被告が逮捕され、死刑確定する。拷問による自白、被告の精神疾患や証言の不明瞭さに加え、様々な背後の動きとともに、事件は闇の中に迷走する。

米軍占領下で起きた大量殺人事件。
自分がこの事件のことを知ったのは、
おそらく中学生の頃だったと思う。
法医学の本やら昭和の怪事件やら、
そういうものに興味を惹かれて、
その後何かしら書かれたものを見かけると、
都度何度も何十編も読んできたので、
自分の記憶も曖昧でいろいろな情報がありすぎる。
もちろんどこまでが推論で、
どこまでが事実がわからないことも多い。

この映画も100%事実ではないし、
推論も多く含まれている。
それでも平沢はやっていないという前提で、
彼が自白をしたとされて、
死刑囚となった過程が描かれる。
熊井啓監督はそう信じていたようだ。

実際そうだったのだろう。
だから平沢は獄中死した。
死刑になることはなかった。

一方異常な速さで死刑を執行された人がいる。
それが飯塚事件。
その飯塚事件を追い続けたドキュメンタリーが上映されている。


2002年に発生した事件。
戦後まもなくではない。
今もこうした事件と判決は続いている。




画面を観ていて、
藤岡重慶、庄司永健、井上昭文の顔を観て、
「わ。西部警察だ!」とほくそ笑んでいた。
日活だもの。
そりゃそうだわw。


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「日本列島」 [Amazon Prime Video]


日本列島

日本列島

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2022/01/06
  • メディア: Prime Video


昭和三十四年。日本基地のCID(犯罪調査課)のポラック中尉は、一年前のリミット曹長水死事件の謎を追えという特殊命令を下した。日本の警察は殺人事件として捜査を開始したが、米軍が強引に死体を本国に送還し、事故死として処理してしまっていた...。

「沖縄だって日本列島の一部だよ」
クライマックスでの二谷英明の言葉、
これが重くのしかかる。
今もって沖縄は一部ではあるが、
本当に日本の一部なのかわからない。
それどころか、
日本列島の一部には米軍基地と、
米軍の飛行ルートという眼に見えない国境がある。
それは厳然たる事実だ。
日本列島内が一つの国だなんて、
おめでたいことを思っている人は、
本当に知らないか、
知っていても認めたくないだけだ。

名前は変えているが、
下山事件も松川事件も三鷹事件も、
国鉄の組合のアカ化に対する、
キャノン機関の仕業だというのは巷間言われている、
当然この時代になっても、
そういう影響はあるに決まっている。
そしてこの当時だからこそ、
日本のあちらこちらに国境はあった。
そして治外法権も。
それは今の沖縄もまた同じ。
そこには日本の自治権はない場所が点在する。

きっとあの新聞記者も、
沖縄に住めばわかるのだろう。
当時はアメリカ占領下であり、
今よりも更に日本としての権利も場所も、
余りにも希薄だったに違いないから。

占領はまだ終わっていない。
日本は独立国家などではない。
そんな国家の人間が「愛国者」などとほざく。
わかってねーなと思う。

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「異人たちとの夏」 [Amazon Prime Video]




異人たちとの夏

異人たちとの夏

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2015/12/01
  • メディア: Prime Video


妻子と別れ、孤独な日々を送るシナリオライターは、故郷・浅草の街で幼い頃に死別した若い父母とそっくりな二人に出逢った。だが、美しい恋人・ケイは、二人にもう決して逢わないでくれと迫ってくる。渇ききった現代人の生活に、そっと忍び込んでくる孤独と幻想。お伽話といって笑えない不思議な時間と非現実な空間を描く。

町山さんの「異人たち」の紹介で、
俄然観る気になって、
それならこっちも先に観ておかないと、と。 
公開当時から「良い映画」と話題になっていたので、
もちろん認識はしていたけれど、
そう言われると観たくなくなる天の邪鬼w。
なんかもう最初から「お涙頂戴、感動作」って言われると、
「じゃ、良いか」って思ってしまう。

いやー、みんな若いw。
そしてあの当時の風間さんの仲間たちが一杯。 
昔の映画らしくオープニングで大凡のクレジットが出るので、
「本多猪四郎」「高橋幸宏」「ベンガル」「角替和枝」「笹野高史」「「石丸謙二郎」
その名前でわくわくしてしまった。
一番の存在感は本多猪四郎監督。
さすがの貫禄でございました。
で、実は山田太一原作と言うだけで、
他は全く真っ白の状態で見始めたもので、
監督が大林宣彦あることも、
脚本が市川森一であることも知らず。

参った。
クライマックスでいきなりああいう展開になるとは。
もう笑うしかなかった。
ただ両親と過ごす時間は本当に愛おしくて、
頑固な職人がよく似合う鶴太郎の演技と、
可愛くて妙に色っぽいお母ちゃんである秋吉久美子が素晴らしくて、
風間杜夫の内面が子どもに返るようで、
もはや親子として何の違和感も覚えない。
あの時間の愛おしさは胸に染みる。
だからこそ現実に戻ったときの虚しさ、
余計に愛を求める気持ちも理解できる。

でもなぁ。 
あの時代だからしょうがないんだけど、
最後の最後のあの演出はなぁ。 
あれが原作もそうなのだとしても、
映像化は何か他に方法がなかったかな。
でもあの時代のハリウッド映画とかも、
あんな感じの作品と、
二つの映画が合わさったようなのもあった気がする。



これが今回リメイクされた作品の予告。
なんの興味もなかったので観ていなかったけれど、
「ほう、そういう感じで設定を弄ってきたか」と思ったら、
もう観たくて仕方なくなった。
そしてポール・メスカルが出ているし、
こりゃ観ておかないと公開しそうだな、と。

後半を観ちゃうと別物かな、と思う。 
まぁいろいろあったみたいだし、
「期待していない分面白いと思われる」という利重剛のコメントに、
首が落ちるほど頷きたい。

せっかく名作になりかけたのに、
ああ残念。 
あのアパートの絵作りとか最高なのに。

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「ジュリアン」 [Amazon Prime Video]




ジュリアン(字幕版)

ジュリアン(字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2019/11/13
  • メディア: Prime Video


両親が離婚し母と姉と暮らすことになった11歳の少年ジュリアン。離婚調整の取り決めで共同親権となり、隔週の週末ごとに別れた父アントワーヌと過ごすことに。母ミリアムは頑なに父アントワーヌに会おうとせず、電話番号も教えない。アントワーヌは共同親権を盾にジュリアンを通じて母の連絡先を突き止めようとする。ジュリアンは母を守るために必死で父に嘘をつき続けるが、アントワーヌの不満は溜まり続け、ある日ついに爆発する。

最悪の採決をしてしまった、
「共同親権」の恐ろしさ。

冒頭共同親権を争うシーン。
日本でもフランスでも変わらない。
いや、世界中で変わらないのだろう。
収入の過多が俎上に乗る。
父親は訴える。
「息子には父親が必要だ」
けれど息子の供述が読み上げられる。
「あの男が来るとコワイ。 
 あの男が母親を殴る。」

しかし次のシーンに映るのは、
息子を迎えに来た父親のならすクラクション。

なぜ人間というのは、
失うとなると執着心が強まるのだろう。
自分が投げ出したオモチャを、
他の子どもが遊び始めると欲しくなる。
いらないと思っていたのに、
いざ捨てるとなると、
誰かにもらわれるとなると惜しくなる。
そこに愛情などないのに。
愛情があると錯覚しているだけなのに。
そこにあるのは愛情ではなく、
ただの執着心なのに。

ある意味、
この映画では男がバカで、
衝動的に凶行を止められなくなり、
おそらくはこの先そのことが幸いとなる。
でもそこまでの時間、
妻や子供たちは恐怖の時間を過ごす。
あの男が呼ぶ「ジュリアン」という名前、
母親が呼ぶ「ジュリアン」という名前、
その意味はおそらく全く違う意味だと思った。
あの男にとって「ジュリアン」は妻を繋ぎ止める道具、
妻の今を知るための情報員、
息子として呼んでいる様子も可愛がっている様子もない。

そう、この男はバカで良かった。
でももっと陰湿で狡猾な男もいる。
もちろん男女逆のパターンもある。
狡猾に証拠を残さないように、
相手を追い詰めていくことだってできる。
暴力を用いなくても相手にダメージを与えることはできる。
その方が悪質だしダメージも大きい。
そうして相手が弱ったところで頽れるところを待ち構える。

日本も共同親権を採択した。
これによってこの映画のように、
子どもと接見することで、
現在の住所や職場などがばれることもある。
円満に別れた二人ならともかく、
様々な事情で知られてはならない情報を抱えることが多い。
だからこそ共同親権を簡単に許すことは危険。



宗主国がそうだからと言って、
この国までもが、
なぜ100年前に帰ろうとするのか?
確実にこの国は、
明治の法律と権力を目指している。
やがて結婚した女は無能力者となるのだ。
そう思いながら毎日「虎に翼」を見て、
「はて?」と首をかしげながら、
はらわたが煮えくり返る思いを抱えている。

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「SISU/シス 不死身の男」 [Amazon Prime Video]



時は第二次世界大戦末期。ナチスの侵攻により焦土と化したフィンランドを旅する老兵アアタミ・コルピと愛犬ウッコは、掘り当てた金塊を運ぶ途中でナチスの戦車隊に目をつけられ、“おたずね者”として追われる。アアタミが手にしているのはツルハシ1本だけ。それでも戦場に落ちている武器と知恵をフル活用し、ナチス戦車隊に囲まれて銃弾の雨を浴びながら地雷原を駆け抜けても、荒野で縛り首にされ窮地に陥っても、上空で戦闘機にツルハシを引っ掛け宙吊りになっても…絶対に死なない!多勢の敵を相手にアアタミはいかにして戦い、そして生き抜くのか――。地上戦から水中戦、さらには空中戦まで、不屈の魂を胸に相手を容赦なく始末していくアアタミの姿は、観る者の身体中の血液が沸騰するほどの興奮を巻き起こす!

劇場公開時から評判だったので、
アマプラで無料になるのを待って。

いやー、爽快w。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」でモヤっていたので、
このわかりやすさは最高。
なんでナチスが映画を喋っているのかわかんねーけどw。
そして最後だけフィンランド語なんだけどw。
(ちなみに「キートス」しかわからないw)

最近の北欧映画って、
この手のわけわかめの復讐譚とか、
殺しても死なない話が面白い。
カウリスマキ兄弟とは真逆のベクトル。
地政学的にこういう男がいても不思議じゃないし、
むしろこう言う血の気の多さがないと、
あの国では国際的に生き残れなかったんじゃないかと思う。
さすがにツルハシ一本じゃダメだろうけどw。

こう言う怪作って必要なんだよね。
何でもかんでも小難しいこと言わず、
何も考えず単純にエンタテインメントを楽しむ。
いいよー、問答無用でナチス皆殺し。
そりゃナチスにもまともな人間もいるだろうし、
それなりに情けの賭けようもあるだろうに、
そんなことは何も考えなくて良いからw。

余りに爽快でくだらなすぎて最高。
ラース・フォン・トリアーに奪われたエネルギーを補充できたw。

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「アメリカン・フィクション」 [Amazon Prime Video]




アメリカン・フィクション

アメリカン・フィクション

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2024/02/27
  • メディア: Prime Video


侮辱的な表現に頼る“黒人のエンタメ”から利益を得ている世間の風潮にうんざりし、不満を覚えていた小説家が、自分で奇抜な“黒人の本”を書いたことで、自身が軽蔑している偽善の核心に迫ることになる。

アカデミー賞授賞式前には見ておこうと。
公開されていない作品や、
配信の関係で見られないものはともかくとして。

ものすごく皮肉な物語。
インテリ一家の黒人の異端児、
セロニアスは小説家であり文学者。
だけど出版からは遠ざかり、
堅物であるが故に大学の授業からは追いやられ、
医師で母親の面倒を見てくれていた妹が急死。
弟は様々な事情から整形外科医でありながら生活が乱れ、
金のく麵も認知症を疑われる母親も彼に降ってきた。
そして売れない小説ばかり、
彼の理想を追って書いていることに、
エージェントらから散々なことを言われて、
半ば自棄になって世間が自分に求めるもの、
「如何にも黒人社会のダークサイドの実録」
それを書いてエージェントに送る。
そこから彼の人生が転がり始める。

くそ真面目で堅物でプライドが高い。
正直言って隣にいたら面倒臭い。
その男が自分とは正反対の男になりきって、
物語を作ってしまったからさぁ大変。
自業自得とも言えるが、
エージェントや編集者や映画関係者に踊らされ、
振り回されてこうなったと言うこともある。
とりあえず出版と映画化と言う道は拓けたが、
彼にとってそれは不本意の連続。
世の中で話題になったのは彼自身の書きたい本ではなく、
世間が黒人に期待する物語。
やがてそれが現実のセロニアスにも影響を及ぼす。

実にシニカルなコメディ。
正直声を出して笑うタイプではない。
ただなんとなくその皮肉にニヤニヤして、
追い詰められる主人公を醒めた目で見つめる。
だからと言ってそれほどの悲劇でもないし、
そのことによって彼は少しずつわかってくる。
世間や家族と自分の関わり方や生き方が。
そしてそれは決して悪いことでは亡い。
彼の人生がこうあるべきだったように、
アカデミー賞のバランスの中でも、
こういう作品があるべきだった。
わかりやすい娯楽大作や、
わかりやすい問題作ではなく、
アメリカのダイバーシティに潜む問題や、
そこに生きるティピカルではないマイノリティ、
彼らの問題を取り上げることが大事だったのだろう。

良い映画だ。
扱うべき問題を扱い、
それが皮肉に満ちている。
決して過激ではないが、
問題という問題を投げ込んでいる。
まさしく「アメリカン・フィクション」だ。
だからその意味と存在意義がある。
受け入れられる人そうじゃない人がいるだろうが、
それはそれで良いと思う。


ところで「Amazon Prime Video」では時折あるのだが、
オリジナル作品と古い作品の字悪
文章はおかしくないのだけど、
なんとなく違和感を感じる字幕なのだ。
おそらくは機械翻訳か、
AI翻訳なのだろうが、
何処かおかしな感覚を与える。
そして題名の直訳問題。
これがちょっとばかり問題なので、
劇場公開並みの字幕監修ができれば良いのに。

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「浮き雲」 [Amazon Prime Video]

再就職への道 ― 映画「浮き雲」に見る失業から再就職へのプロセス ― 

面白い記事を見つけました。
私としては「描かれなかった部分を描いた『かもめ食堂』」って感じ。

おそらくカウリスマキ監督作品としては、
比較的感情表現が豊かな部類。
それはやはり失業からどん底を味わって、
最終的にはつかみ取る未来への希望があるから、
そこに付随する感情表現が最低限必要だったから。
他の作品はどちらかと言えば、
どん底からの希望なんだけど、
この作品は丹念に失業後の甘い見通しからの、
完全なる失望とどん底の気持ち、
どうしたら自分たちを変えられるのか煩悶して、
何とか意地で職場を自ら作り上げ、
今までの経験と地道な努力から作り上げた、
美味しい食事が客の胃袋を掴んでやがて迎える大団円。
自分が思うにはカウリスマキ間時作品の中でも、
とんでもなくハッピーで演劇的映像的作品。

ティピカルとは言いながら、
失業からの男の楽観的な再就職への希望と失意。
これがもうどうにもこうにも情けない。
これが描きたくてこの映画を作ったのではないかと思うほど。
大体においてカウリスマキの描く男は情けなくて、
社会の敗者であり弱者であるのだけれど、
それが一念発起して意味もなく突っ走って、
けっきょく元の敗者の位置に戻るんだけど、
気持ち的には自分と言う存在が変わっている。
そういう情けなさを今回「これでもか」と叩き落として踏みつぶし、
一方同じ失業者の妻は様々な思いをして、
経験をしながら同じように失望しながら、
結果的に信じられるものが何なのかをつかみ取って、
自分も夫も昔の仲間も幸せにしてしまうバイタリティを発揮。
「マッチ工場の少女」で虐げられて絶望して怒って、
凶行に及ぶ女性とは全く違う方向性。

いよいよシネコヤで「枯れ葉」が観られる日が近づいている。
敢えて早く観ることではなく、
「シネコヤで観る」と言うことにこだわった結果、
Amazonプライムビデオで無料で観られるカウリスマキは全部観たし、
Blu-rayセットも買えたので、
いろいろ準備と復習ができたラッキーな時間になった。

カウリスマキと言う人は、
本当に人間が好きなんだなぁと思う。
人間が決して完全なものではないから、
生活には浮き沈みがあって、
人生は長くつらいトンネルもあるから、
人間として輝くし人間として美しい。
その気持ちをごく自然な存在の人間として描き、
シニカルでつらい状況であっても、
どこかおかしい人間味を見せることで人を笑わせて幸せにさせる。
やっぱりこんな人が引退しちゃいけないと思う。
兄のミカ・カウリスマキも描写や表現は違うけれど、
人間が好きだし人間の機微が楽しいと思っている。
この兄弟は手法は違うし表現は違うけれど、
人間のおかしみと愛すべき側面を描写し、
人間賛歌を描き出しているのは同じなのだ。

さぁ「枯れ葉」。
ほぼほぼ「素晴らしい」以外の事前評は聴いていない。
それが自分にはまるかはまた別問題だけど。

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「パラダイスの夕暮れ」 [Amazon Prime Video]


パラダイスの夕暮れ (字幕版)

パラダイスの夕暮れ (字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2023/11/01
  • メディア: Prime Video



「真夜中の虹」「マッチ工場の少女」と共に“労働者三部作"といわれ、世界中から高い評価を受けたアキ・カウリスマキ監督初期の傑作。ゴミ収集車の運転手のニカンデルは、スーパーのレジ係のイロナに恋をする。しかしやっとのことで彼女をデートに誘うも、大失敗をしてしまう。ところが、仕事をクビになったイロナが、ニカンデルのもとに転がり込むことになり…。

アキ・カウリスマキ監督の作品を見ていると、
いつも思うことは、
「この演技で魅せる役者はすごいなぁ」ということ。
そもそも毎日の生活で、
ドラマや映画みたいなやりとりなんてしない。
「すげぇなぁ」って思うのは、
大抵現実にはあり得ないことだから。
人生の再現ドラマになるのも稀だからだし、
話題になるのも珍しいとか特別だから。
アキ・カウリスマキ監督の映画は、
そのまったく逆を行くテンション。
殆どの会話は余り感情もなくて、
どちらかと言えば棒読み。
でも原語が違うからなのだろうけど、
日本語の棒読みともまた違う。
言葉の意味を含んだ言い方は感じられる。
そして身体の演技も最小限だけど、
そんなに喜怒哀楽を身体中で表現する普通の人はいない。

だから本当に日常を切り取った様な、
そんな風情にホッとしながら観ることが出来る。
ある意味黒澤明やタランティーノみたいな監督との対極。
さすが小津安二郎に傾倒していただけある。

で、これもまた一貫してその雰囲気で、
おなじみの俳優たち。
理不尽な世の中、
労働者に厳しい世間、
何をしてもなんだかかみ合わない二人、
だけどつかず離れず。
その二人が最後に選ぶ道には度肝を抜かれるが、
これもまたフィンランドならではだし、
それを見送る友人の朴訥とした感じと、
ちょっと羨ましげに見つめる遠い瞳。
そして何事もなかったように去って行く。

大きな感動とか、
拳を振り上げるような興奮はないけれど、
確実に「うんうん」と頷いて、
同意してしまうような世界。
私は本作では、
冒頭から「独立して清掃会社を始めるから一緒にやろう」と言って、
一緒に働き始めたらすぐに休止してしまう男。 
なぜか彼にものすごくかんじょういにゅうしてしまった。

希望が持てればどこでもパラダイス。

ホント、
恋愛も仕事も作られすぎた映画多すぎる。

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