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「アラビアのロレンス 4Kレストア版」 [ムービープラス]




アラビアのロレンス(Mastered in 4K) [Blu-ray]

アラビアのロレンス(Mastered in 4K) [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
  • 発売日: 2013/12/20
  • メディア: Blu-ray


1914年、第一次世界大戦が勃発し、アラビアはドイツと結んだトルコ帝国の圧政下にあった。英国は、ドイツ連合軍の勢力を分散させるため、稀代の天才戦略家ロレンスをアラビアに派遣する。
アラビ王族のファイサル王子の軍事顧問となったロレンスは、ハリト族のリーダー、アリや黄金を探し求めるアウダらとともに、
独自のゲリラ戦法を駆使して反乱軍を指揮し、アラブ国民から砂漠の英雄とうたわれるようになる。
だが次第に自分が軍上層部に利用されていることを知り、アラブ民族もまた、部族間の対立からロレンスを裏切っていく・・・。

現在勃発中のイスラエルによるガザへの攻撃。
その発端となったのははるか100年以上前、
ロレンスがアラビアで様々な画策を行った裏で、
イギリスが二重にアラブともイスラエルとも「独立」を保証する契約をしていた。
オスマントルコが崩れ去った後、
残ったのはアラブはアラブの立国を主張する一方、
イスラエルはドイツが莫大な賠償を負ったことから、
不景気と憤懣やるかたない生活苦によりヒトラーが政権を奪取、
ヨーロッパを次々と攻撃して併合、
その結果ヨーロッパのユダヤ人はホロコーストで大量殺戮、
しかし彼らはそれがゆえにシオニズムがより一層強くなり、
戦後イギリスの支援もあって独立。
けっかイスラエルの中にアラブ人居住区が残され、
今となってはガザのみとなったイスラエル内のアラブ人居住区に、
イスラエルは「出ていけ」と攻撃を仕掛ける。

中学生くらいの時に、
一度TV放映されたのを見たことがあるが、
フルで通してみたことがなかった。
この手の映画が放映されると、
とりあえずは録画しておく癖がついているので、
今回もレコーダーの中から発掘。
「4Kレストア完全版」の長尺227分だった。

最初に見たときは何の予備知識もなかったので、
何もわからずに見ていたが、
とりあえずイギリスが裏切ったことは分かった。
それが故にアラブは部族ごとの対立を解消できなかったということ、
自分の仕事に失望したロレンスが、
殆ど自殺的な行為による事故で死んだこと、
映像がとんでもなく美しかったこと、
その程度のことしかわかっていなかった。

一応私もただ漫然とぼーっとして年を重ねたわけではないので、
その後ロレンスについて調べたこともあった。
おおよそはうわさや推測の範囲として耳にしたものだったが、
ロレンスはおそらくゲイであったとか、
英雄として描かれているようではあるが、
実はロレンスもイギリスに利用されただけであるとか、
おおむね否定的なものだった。
実際映画の中でも直接的には描かれないが、
ロレンスが異様な自信家であるのと同時に、
非常に繊細な神経の持ち主でもあり、
それがゆえにアラブの部族長たちと渡り合えたし、
大胆な作戦でオスマントルコとを攻撃できたともいえる。
そしてこれは極めてひそやかに描かれるが、
彼が拷問を受けているときに快感を感じていることや、
トルコ兵たちから性的暴行を受けたとされている。
これは後日ロレンスによる真っ赤なウソとわかるのだが、
マゾヒズムの傾向があったことは確からしい。
もっともその後に彼がトルコ軍に対して行った血まみれの所業も、
そういう裏付けでもなければ許されるものではなかったのかもしれない。
まぁいい歳のババァになれば、
こんな暗喩も簡単に読み取れるようになるわけで、
きわめて優秀な情報将校だったかもしれないが、
彼のエキセントリックな性格と、
それに輪をかけることとなるこの経験が、
彼ののちの人生をつぶしたことも想像に難くない。

とにかく映像は素晴らしい。
今どきの日本では非常に限られるが、
これは70mmを上映できる劇場がふさわしい。
こんな映画を1962年に作っていたのだから、
世界というのは広いし恐ろしい。
一方の日本では白黒の「十三人の刺客」である。
ただしこちらはこちらで素晴らしい映画ではあることは間違いない。

そもそも事情が分かっていて見ると、
イギリスの帝国主義の罪深さと、
それに利用されて英雄に祀り上げられたロレンスの哀れさ、
これがとんでもなく腹の立つ話であり、
かつとんでもなく悲壮な英雄の物語である。
まるで人工物のように端正なピーター・オトゥールの顔を見ながら、
きわめて冷徹に物語を眺めていた私に、
何一つ感動は湧き上がってこなかった。

「風と共に去りぬ」もそうだが、
制作された当時の状況や価値観と今は違う。
だからどんな名作だとされる物語も、
今見ると感動するとは限らないし、
かつ名作と感じることも認めることはできても、
感動したり感情移入できるとは限らないのだ。

「There will be blood」

大好きな映画の題名だが、
ロレンスの運命もまたそうだったのだ。

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