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「RUN/ラン」 [映画]




RUN/ラン(字幕版)

RUN/ラン(字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2021/11/19
  • メディア: Prime Video


ある郊外の一軒家で暮らすクロエ (キーラ・アレン) は、生まれつき慢性の病気を患い、車椅子生活を余儀なくされている。しかし地元の大学への進学を望み自立しようとしていた。そんなある日、進学の夢も後押ししてくれている母親ダイアンに不信感を抱き始める。ダイアンが新しい薬と称して差し出す緑色のカプセル。クロエの懸命な調査により、それは決して人間が服用してはならない薬だったのだ。クロエは母親から逃げようとするが、その行く手には想像を絶する試練と新たな衝撃の真実が待ち受けていた…。

この映画の公開当時、
「たまむすび」で町山さんが紹介していて、
とんでもない映画だなと思った覚えがある。
親子関係、特に母子関係に、
若干の(なんてものじゃない)トラウマを持つ私は、
面白そうだと思っても観るのが怖かった。
WOWOWで放送されたときに録画したが、
なかなか観る勇気が出なかった。
今回はアマプラでオススメに出てきたから、
「これも運命か」と腹をくくったw。

全てを見終わって思うのは、
「依存ってコワイ」って言うことと、
「あの母親はもし○○の○だったらどうしていたか」
ネタバレだから伏せ字にするけど。
そして因果は巡ると言うことだ。
ただここ数年の間に、
現実にこのような事件が起こっていて、
二番目の疑問は打ち消された。
事実は小説より奇なり。
最近は映画の設定を超えた事件が起こる。
まったくどうにもならない社会だ。
もともとこういう事件は、
広いアメリカで隣人が遠いからこそ成立する、
そういうものだと思っていたが、
今や日本では公共住宅のようなところでも起こる。
なんと隣人との距離が遠いことか。

傍からは美しい親子愛。
正常と異常の境はどこにあるのか。
どこからが毒親でどこまでが普通の親なのか。
線引きは非常に難しい。
ハラスメントと同じで、
受ける側の感情に左右されることは言うまでもないが、
物理的に異常さを露呈していれば、
客観的にも異常さを証明できる。
でも証拠がなければ他人は手出しも口出しもできない。
いつから親子関係がこんなことになったのか。
いや、聖書の時代から同じだ。
カインとアベルの兄弟でさえ、
それぞれに歪んだ愛情と仕打ちで苦しんだ。
その現代版が「エデンの東」だ。

本作は極端なストーリーだが、
これと似たようなことはある。
事件として聴いたことはある。
薬物ではなく物理的に子どもの身体を破壊する。
そんな親も本当にいるのだ。
いつまでも子離れできない親。
娘と服を共有して一緒に出かける母と娘。
たまに出かけると見かける。
この関係もまた本当にただの仲良しなのか、
私にはある意味少し違う気がしている。
健全とはなんなのか。
正解はないだけに日々疑問に思っている。

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「ドラキュラ/デメテル号最期の航海」 [映画]




ドラキュラ/デメテル号最期の航海(字幕版)

ドラキュラ/デメテル号最期の航海(字幕版)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2023/11/29
  • メディア: Prime Video


ルーマニアのカルパチア地方からロンドンまで、謎めいた50個の無記名の木箱を運ぶためチャーターされたデメテル号は、不可解な出来事に遭遇する。見渡す限りの大海原で、毎夜人間の生き血を求め襲い来るドラキュラが出現したのだった。パニックに陥りながらも、生き残りをかけた壮絶な戦いに臨む乗組員たちだったが…。

なにせハマーのホラーファンなもので。
今でもドラキュラ、フランケンシュタイン、ゴーレムとか大好き。
なのでこの映画も劇場で観ようか迷って、
まぁこの手の映画はすぐに配信になるし、
足代を使っていってガッカリも辛いのでやめた。

いきなり船長の可愛い孫、
見覚えがあるなぁと思ったら「カモン カモン」の子じゃないの。
あの巻き毛と大きな目が印象的。
さすがに子どもだから生き残るのかなぁと思ったら、
一番可哀相な殺され方と甦り方。
全体的にコッポラの「ドラキュラ」の影響があるようなデザイン。
ドラキュラが伯爵姿を表さないので、
化け物だけで終わるのはちょと残念。

あの時代だからしょうがないけれど、
生血をいきなり輸血して、
それでそれぞれがピンピンしているのってどうなのか。
原作通りなのかもしれないが、
現代からすると不安になるわw。

まぁもう最初から結末はわかっているし、
おまけにもはや古典ホラーなので、
どこにどんな面白さを持ってくるかなんだけど、
期待したほどではなかったかな。
プライム無料まで待っていたから良いけどw。

コッポラの「ドラキュラ」があるのに、
ここをクローズアップして撮ろうとした根性は立派。
如何せん密室劇(船上)の面白さが、
神出鬼没のドラキュラには通用しないことが残念。

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「においが眠るまで」 [映画]



あらすじ:
匂いに敏感な、ひのき(17)は、
亡くなった父が残した全国のミニシアターで観た映画の感想が書かれたノートを見つける。
ある映画館だけ場所がわからず、匂いのメモや、感想だけが書かれていた。
コーヒー豆の焙煎店を営んでいた父が残したコーヒー豆を配りながら、父の巡った映画館へと旅にでるひのき。
薄れていく父の匂いと、場所のわからない映画館を探しながら、ひのきは少し、大人になっていく。

ロケ地にあの映画館版の御成座と、
シネコヤが使われていると言うことで、
何よりもミニシアターファンとして観なくては!
と言うことで、
ストーリーも出演者も調べずに向かう。
最近このパターン多過ぎw。
でもそれだけシネコヤでかかる映画に信頼を置いている。

ひのきは父親を亡くして、
それを忘れたいがために片付けを進める母の違和感を覚える。
彼女はまだ忘れたくないのだ。
彼女の思い出は「におい」と強く結びついている。
だけどやがてその「におい」も薄れて、
記憶から消えてしまうのだ。

映画館にはそれぞれのにおいがある。
シネコン全盛の今、
どこのシネコンも同じじゃないか、
するのはポップコーンのにおいだよ、
そう言われてしまいそうだが、
まだ入場制限もなく、
コンクリートの床で冬は底冷えがして、
夏は涼しいと言うより寒くなりそうなくらい、
途中退場途中入場あり、
中で飯を食おうが酒を飲もうが、
自由で何の文句も言われなかった時代、
映画館の中は生活のにおいであふれていた。
おととしから去年初めにかけて、
シネコヤは改装をしたのだが、
改造前のシネコヤには懐かしい独特の香央理があった。
それはちょっとかび臭いようなちょっと甘いような、
不思議に心が落ち着く癒されるにおいだった。
改装後の今は多少薄くなったのだが、
それでもやはり独特のにおいをいつも感じている。

秋田の御成座は手書きの看板で有名。
今もまだ手書きの看板にこだわって、
その素晴らしさはSNSでいつも紹介されて、
更にはいつも可愛いウサギが紹介される。
もちろんと言ってはなんだが、
生憎私は行ったことがないので、
どんな館内なのか映像を楽しみにしていた。
期待通りだった。
残念ながらうさちゃんは登場しないが、
外からの眺めで存分に看板が映されて、
中の様子は昔懐かしい田舎の映画館。
一番後ろに手すりがある作りも、
決して人間工学に基づいていなさそうなシートも、
懐かしい限りでそれだけで心が躍る。
そこで繰り広げられるユルい地元の爺さんたちとの会話。
その会話と存在が妙にしっくりとくるひのき。
ここは映画館であり、
街の暇な爺さんたちの社交場でもある。

秋田から唐突に鵠沼海岸。
シネコヤの主人との話が始まる。
この主人はあくまでもシナリオ上の主人。
本当の店主である竹中翔子さんとは見た目と雰囲気が全然違う。
もしかしたらこの人が店主なら、
シネコヤは今のような雰囲気ではなかったかも。
映画関係の本やパンフレットであふれた1階の店内、
アンティーク家具のソファや椅子が置かれた、
2階の落ち着いた雰囲気のシアター。
今そこに座っている空間が、
目の前に映し出されている不思議。
思い出される1階の本のにおい。
夜更けにベランダでたべるシーフードヌードルの背徳感の香りまで、
何とも生々しいくらいに脳内で再生される。

そして次に行き着いた先は、
周りのあるものや特長しかわからない映画館。
でもその映画館も今はなく・・・。

父親のにおいを思い出せるうちに、
そのにおいを再現しようとするする。
そのにおいは父親の日常のにおい、
構成するのは父親が生きた世界のにおい。
夕方になると家々から流れてくる夕食の香り。
それもまた生活の世界のにおい。
ちなみに私が働く事務所は、
ベーカリーがすぐそばにあるので、
窓を開ける季節はパンを焼くにおいで満たされるのが日常。
おそらく他人からしたら、
私にも独特のにおいがあるのだろう。
昔は喫煙者だったのでそれが私のにおい。
今はもうタバコも酒も止めたけれど、
年齢なりの加齢臭とデブの汗臭いにおいだろうか?

ひのきがあの店を継ぐのかはわからない。
でもあの設備さえ残しておけば、
きっと彼女は何かにつけ豆を焙煎して、
美味しい珈琲を入れることができるだろう。
それはにおいに敏感で父親を深く愛していたひのきにとって、
当然のことに用に思える。
でもそれまであの店の香りは封印だ。
次にはひのきが新しいにおいを残すようになる。

たった91分の映画だが、
ものすごく密度が濃くて、
ものすごく満ち足りた気持ちになれる。
両方の映画館を知っている人なら、
なおさらその思いは強いだろう。
こういう形でミニシアターに人が興味を持ち、
足を向けてくれるようになったら嬉しい。

でも自分の席が取りにくくなるのはちょっと辛いw。


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