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「窓ぎわのトットちゃん」 [映画]



落ち着きがないことを理由に、小学校を退学になってしまったトットちゃん。
新しく通うことになったトモエ学園の校長先生は、
出会ったばかりのトットちゃんに優しく語りかけた。
「君は、ほんとうは、いい子なんだよ。」
トットちゃんの元気いっぱい、
すべてが初めてだらけの日々が始まる―ー 

思いっきり世代的にど真ん中。
ベストセラーになる様子も見ていた。
でもそこはひねくれ者なので読んだよことがない。
大体なんで今頃トットちゃんなのかわからんし。



年末にこれを聴いて気持ちが180度変わりまして。
誰かが「化粧をしたような絵が好きかどうか」って言っていたけど、
それもまた昔風の絵なんだと言われれば、
「きいちのぬりえ」とか自分が幼少時馴染んだ絵、
それを思い浮かべると「なるほど」と思った。
いや、むしろ「化粧をしたような絵」という方が捉え方が違う気がする。
最初に絵を見たときそんなことまでは思わなかったし。

子どもらしく表情をくしゃくしゃにするトットちゃん。
これを「化粧をしたような絵」と表現するのは表面的すぎる。
もしただキレイな絵が欲しいのならば、
あんな表情はつけるわけがない。
素直で奔放で自由なトットちゃんの、
感情に素直な表情を表現するのに、
ただただ見た目のキレイさを求めちゃダメだし。

トモエ学園は多様性の集団。
初めての仲間たちにも、
子どもらしい素直さで臆せず接していくトットちゃん。
そして悪意がないことがわかっているから、
相手もみんな心を開くし、
なによりもトモエ学園が心を開いて誰でも受け入れる。
トットちゃんの話を3時間聴いてくれる校長先生。
そうと知っていて受け入れる校長先生。
逆に言えば、
当時から日本の学校は排他的だったのだ。
型にはまった子ども以外は、
障害のある子も規定値のはまらなければ疎外。
近所の子供たちが「変な学校」とからかうけれど、
トットちゃんたちは負けていない。
トモエ学園で肯定されて育っているから、
「へん」と言われてもちっともそう思わないし、
それに対して卑屈にもならない。

だけど幸せな時間は長くは続かない。

真珠湾攻撃から米英を敵国として参戦。
最初は威勢の良かった日本も、
戦況の悪化に伴って、
生活も貧しくなり、
子供たちも満足に食べられなくなる。
バイオリニストの父親は慰問で軍歌の演奏を求められるが、
悩み抜いてそれを応じることを拒否して、
報酬も食べ物も手に入らない。
やがて空襲がトットちゃんたちにも迫り、
トモエ学園は甲斐さんとなって、
トットちゃんたちは青森へ疎開する。
そして空襲でトモエ学園も焼け落ちる日がやってくる。

これと同じことが今も世界中で起こっている。
ガザの子供たちは毎日命の危機に晒されている。
日本は戦争のできる国になろうとしている。
だから今徹子さんはこの作品を許可したのだ。
それこそ黒澤明以外の監督から、
ベストセラーだった当時オファーを受けても、
一切許可しなかった徹子さんが、
今この作品を世に出すことにしたのは、
徹子さんがUNICEFの大使として、
世界中の子供たちと接してきた歴史と共に、
今こそその苦しみをわかってもらいたい、
少しでも助けになりたい、
その思いがきっとあったのだろう。

ラストシーン、
少し成長したトットちゃん。
そして確実にトモエ学園の精神を受け継いだトットちゃん。

後半はタオルハンカチを手にどうぞ。

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