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「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」 [ストリーミング]


ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス[Blu-ray]

ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス[Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • 発売日: 2020/09/16
  • メディア: Blu-ray


[内容解説]
≪世界で最も有名な図書館―ニューヨーク公共図書館(NYPL)とは?≫
ニューヨーク公共図書館とは、マンハッタン、五番街と42丁目との交差点に位置し、荘厳なボザール
様式建築によって観光名所としても名高い本館<スティーブン・A・シュワルツマン・ビル>と、研
究目的のために公開されている4つの研究図書館、そして地域に密着した88の分館を合わせた92
の図書館のネットワークである。1911年に本館が竣工し、アンドリュー・カーネギーらの寄付により
、各所に分館を増設してきた。人文科学、社会科学、及び、美術において世界有数の蔵書を誇り、総
計6,000万点ものコレクションが所蔵されている。利用は原則として無料であり、ニューヨーク市に
在住あるいは勤務している者であれば誰でも会員になることができる。 名称に「パブリック(publi
c)」と入っているが、独立法人であり、財政的基盤は市の出資と民間の寄付によって成り立ってい
る。ここでいうパブリックとは「公立」という意味ではなく、「公共」(一般公衆に対して開かれた
)という意味に当たる。

シネコヤでずっと上映していたのだが、
3時間半という長丁場と、
上映時間の調整が付かなくて、
やむなくストリーミングで観ることに。

昨年「パブリック 図書館の奇跡」を観たときから、
日本とは図書館の役割が違うことは感じていた。

「パブリック 図書館の奇跡」[Blu-ray]

「パブリック 図書館の奇跡」[Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: バップ
  • 発売日: 2021/01/20
  • メディア: Blu-ray


ただこのときは映画のストーリーとキャラクターにのまれて、
そこを余り深く追求しないまま、
自分の思考を止めてしまっていた。

今回この3時間半に及ぶドキュメンタリーを見て、
図書館がやっていることとや、
その舞台裏を淡々と映している(もちろん編集等あることは百も承知)、
そこにインタビューもいなければ妙なオピニオンも入らない、
それなのに3時間半全く退屈もせずに、
ずっと見続けて考え続けてしまったのは、
文字通り「公共」の意味が全く日本と違うからだろう。
「公立」ではなく「公共」であることの意味は、
老若男女、人種を問わず、
総ての市民の居場所になれること、
貴重な資料や書物を保持して守っていく責任、
多くの市民の知識やスキルのレベルアップに手を尽くすこと、
それはもう膨大でとんでもなく幅広い分野にわたり、
かつ時代の変化に即して「公共」も変わることを要求され、
与えられる予算や寄付をどう使うことが「公共」の役に立つのか、
「文化」と言っても良いほど広い視野で、
市民を支えて導いて一緒に発展していくことなのだ。
これはものすごくショックだった。
因みに地元の図書館を調べてみたが、
これほど幅広い催し物や教育の場は、
残念ながら用意されていなかった。
日本における図書館とは、
まさしく「蔵書の置き場」でしかなかった。
このことは日本の「公共性」の低さにも反映されている。
このレベルで蔵書を持つ意味を持つのは国会図書館くらいで、
残りは「市民の無料蔵書置き場」になっている。
残念ながら今の自治体レベルでは、
或いは過去の歴史からしても、
この枠から出ることは難しい。
ただでさえ近年はTSUTAYAに図書館業務を委託する自治体があとを絶たない。
館長が会議の中で口にする言葉、
「ベストセラーは良い。 
 無料でなくても手に入れる機会はある。
 しかし研究書などは10年後必要とされたとき、 
 我々が蔵書しておくことに意味がある。」
これこそが「公共」であり「公共図書館」の役割なのだ。

「パブリック 図書館の奇跡」を見た時に、
主人公たちが取る行動の意味が理解しきれないこともあった。
しかし今ならわかる。
彼らがホームレスたちと一緒に戦ったことは、
彼らが働く図書館の「公共性」に関わること、
たんなる「蔵書の置き場」ではなく、
「公共図書館」としての役割を果たすために、
どうしても必要なことだったのだ。

「素晴らしい」と感動しながらも、
その一方でどうしても感じざるを得なかったのは、
日本という国の文化への理解や投資のレベルの低さだ。
それと共に「自助、共助、公助」の言葉の通り、
公的な機関でさえも、
「公共」部分が一番後回しになっている気がするのだ。
便利な時代になったのでいつでも本は買える。
Amazonから1日で届くことも革命だったが、
今や電子書籍なら読みたいと思ったその時に読める。
では公共サービスはいかがなものか。
昨年の一律給付金の件でもおわかりの通り、
無駄な時間と作業で遅れに遅れた。
国は給付を決定してあとは自治体に丸投げ。
その自治体はどうかと言えば、
近年正規の公務員はどんどん少なくなり、
有期契約職員が増える一方である。
ただでさえ手一杯のところに国から降ってくる仕事。
そりゃ「即時」と言われても無理な話。
あれほどマイナンバーに抵抗してきた人でさえ、
「マイナンバーがあるんだから簡単だろう」と言い出す始末。
しかし従来の自治体システムとマイナンバーシステムは統合されていない。
ましてや個人個人の口座など登録はない。
「これを機にマイナンバーカードを」と呼びかけても、
窓口が大混雑大混乱するだけ。
この国の「公」の場所は、
「公共性」が著しくかけていると思わざるを得ない。

もちろん一つの図書館の話と、
日本のシステムを天秤にかけるのは間違えているかも知れない。
しかし「公共」と言うことの意識
これが決定的に違うことが、
こんなにも文化的人道的な差を生むものなのか、
実に深く考えさせられることばかりである。

刺激的なドキュメンタリーを期待して、
ワクワクドキドキする内容を期待している人は観ない方が良いかも知れない。
しかしものすごく考えさせられるし、
日本という国に対する絶望を感じさせられる。
「公共」とはなんなのか。
今一度考えなければならない。
この国家の数多いる公務員、
総ての人に観て欲しい作品である。

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