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「ボーはおそれている」 [映画]



日常のささいなことでも不安になる怖がりの男ボーはある日、さっきまで電話で話してた母が突然、怪死したことを知る。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった。これは現実か? それとも妄想、悪夢なのか? 次々に奇妙で予想外の出来事が起こる里帰りの道のりは、いつしかボーと世界を徹底的にのみこむ壮大な物語へと変貌していく。

正直言ってアリ・アスター監督は苦手。
熱狂的なファンが多いけれど、
私はどちらかと言えば苦手。
「ヘレディタリー/継承」に関してはホラーとして、
即物的な恐怖と精神的な恐怖が途中で反転して、
何とも気持ちの悪いホラーという印象だった。
「ミッドサマー」は何度観ても途中で寝てしまう。
覚悟を決めて何とか頑張って観たが、
その宗教的な味わいと要素が受け入れがたかった。

ではなぜこの3時間の長尺を観る気になったか。
それはやはり公開前から評判が高かったのと、
ホアキン・フェニックスが主演だからだ。
それともうひとつ。
「オオカミの家」のホアキン・コシーニャ、クリストバル・レオン、
彼らが劇中のアニメーションを担当したと聴いたから。

冒頭からずっと、
ボーの頭の中の悪夢を見せられている感じ。
アニメーションのシーンは、
造形に特徴があるのですぐにわかる。
そして「オオカミの家」では味わえなかった、
華やかで美しいアニメーションも観られる。
ただそれさえもボーのおそれている世界なのだが。
余りに美しくて素晴らしくて、
3時間のうちこれだけでも観る価値は充分にある。
中身に関しては言わない方がいいと思うし、
この作品がアリ・アスター監督にしては、
ユーモラスであり声に出して笑えるところもあり、
滑稽なボーの姿にスラップスティックな雰囲気さえ感じる。



しかし。


最後にガツンとくる。
それは予想もしなかった形で。






一応警告だけはしておく。
「私がこんなに愛しているのに、 
なんで貴方はわかってくれないの?」
そういうタイプの毒親がいる人。
その人はできれば観ない方が良い。
そこから自分とボーが一体化して、
途轍もない苦痛になることもあると思う。
或いは客観的にそれを超越した人なら、
逆に家族を笑い飛ばせるかもしれない。
まぁ実際笑うしかないグロテスクな場面もあるし。

いずれにしても私はお腹いっぱいだ。
3時間という長丁場もあるけれど、
終わる頃にはぐったりしていた。

アリ・アスター監督の映画は、
腹の底から生えてきた手が、
心臓を揉みしだいて握りつぶすような感覚がある。
それがたまらなく好きな人もいるだろうが、
今回は題材も相まって私はギブアップ。
ただしホアキン・フェニックスの演技は素晴らしい。
それはまた観たいと思えるが、
トラウマが自分を潰しかねないので止めておく。

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