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「愛と情熱の山田うどん : まったく天下をねらわない地方豪族チェーンの研究 」 [本]


愛と情熱の山田うどん : まったく天下をねらわない地方豪族チェーンの研究 (河出文庫)

愛と情熱の山田うどん : まったく天下をねらわない地方豪族チェーンの研究 (河出文庫)

  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2022/12/03
  • メディア: 文庫



関東ローカル&埼玉県民のソウルフード・山田うどんへの愛を身体に蘇らせた二人が、
とことん山田を探求し続けた10年間の成果を一冊に凝縮。

世界は二つに分けられる。
山田か、それ以外かーー

企画・解説:武田砂鉄

確かに覚えている。
東日本大震災ののち、
文化放送のくにまるジャパンの中で、
えのきどさんとトロさんが妙に山田うどんで盛り上がっていたことを。
しかし当時の私は、
裸眼(と言っても視力矯正のコンタクトレンズをした状態)で文庫本を読むことに支障がなかった。
ゆえに当時は滅多なことでハードカバーを買わなかった。
今は文庫本を読むのがつらくなったので、
潔くハードカバーを買うか電子書籍を買う。
何が言いたいかと言えば、
山田うどんの本が2冊立て続けに出版されたとき、
私は「文庫本になるだろうから待っていよう」と思ったのだ。

山田うどんと言えば、
この本にもあるとおり埼玉県や多摩と言われる地域にあることが多い。
東京生まれで神奈川育ちの自分が、
なぜ山田うどんを知っているかと言えば、
ぽつんと神奈川県内に孤高の案山子の看板を立てたからだ、
一番古い記憶はわからないが、
おそらく小学生の時に夏休みに秩父に行ったとき、
街道沿いで頻繁に見かける山田の看板に目を惹かれた。
親に「食べたい」と行った記憶もあるのだが、
おそらく却下されたのだろう。
その後は余りクルマとは縁のない生活になり、
30歳頃に相模川にかかる戸沢橋の海老名よりにあった山田うどん。
そこまで記憶は途絶えるはずだ。
その山田うどんはいつの間にか他業種になっていた。
ちなみにその物件は何をやっても巧く行かず、
この30年くらいの間に15くらい店舗が変わった。
そして山田うどん食堂亀井野店である。
いつの間にかできていたこの山田うどん食堂、
なかなかに広い駐車場を備えている。
地価の高い藤沢市の街道沿いにしては贅沢なスペースだ。
それは今も健在、
昼時などは満車と言うときもみられる。
かようにして私は山田うどんになじみがあり、
当然のように当時も興味を持っていたのである。

そして恐るべきことに、
このときの出版社の担当が武田砂鉄さんであったという驚異。
そりゃ文庫化されるとあっては、
万難を排して読むしかないではないか。



満腹である。
非常に堪能した。
この感覚は読んだことがない人にはわかるまい。
山田うどんというローカルでありながら、
人を魅了してやまない企業であること、
「美味しい」は禁句であること、
「そこそこの味で満腹感を提供する」
そんな不思議な満足感が自分を満たす。
今までは編集者という影の存在であった武田砂鉄さんも、
後書きに名前を出して堂々と山田を語る。
こんな至福があるだろうか。
そして読んで満腹になって充足感を感じられる、
それも決して美味礼賛ではないのに、である。

そして生来の山田ものでなく、
時折見かけるだけだった山田うどん、
その魅力を語って語って、
ラジオから聞こえるその内容に引き込まれ、
何の因果か毎週山田うどん食堂を眺める生活。

やはり山田うどん、ただ者ではない。


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