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「なんかいやな感じ」 [本]


なんかいやな感じ

なんかいやな感じ

  • 作者: 武田砂鉄
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2023/09/27
  • メディア: Kindle版


ずっとそこにあって、続いてきたもの。その漠然とした感覚を直視してみようと思った。
1982年生まれ。物心ついてから今まで、遠くて起きていたこと。近くで起きていたこと。
その記憶を重ねて、「社会」を語るためにも、まずは「感じ」を考えてみようと思った。
〈今回の本は、自分の体験や思索を振り返るようにして、この社会に染み込んでいる「いやな感じ」はどういう蓄積物なのかを見つめようとした記録である。…同世代が読めば通じやすい話も出てくるが、特に世代論ではない。主題は史実や思い出ではなく「感じ」である。〉ーー「まえがき」より

最近は老眼がすすんだこともあって、
本を読むのがすっかり面倒になってしまった。
にもかかわらず、
「読みたい」という欲だけは衰えないので、
次から次へと積ん読は増えるばかり。
気分が乗れば一気に読み進むが、
今年の繁忙期から眼精疲労もあって、
コンタクトが合わなくなったりして、
活字を読むのも一苦労。
仕事でその気力のあらかたを使い果たしている。

そうは言っても、
武田砂鉄の本だけは読むと決めている。
特にこの本は書き出しから、
今までの彼の本とは全く違う文体と内容。
読み始めて1ヶ月半かかったけど、
面白く読ませていただいた。

同じ出来事でも、
真っ直ぐ見るのではなくて、
ちょっと角度を変えてみたり、
俯瞰してみたり、
下から見上げてみたり。
武田砂鉄というライターの魅力は、
常にその視点のユニークさにある。
ではなぜそう言う視点を持つに至ったのか。
この本では幼少期に始まって、
直近まで今までになく私的な思い出や思いが綴られる。

武田少年は少々変わってはいるが、
思っていた以上に、
自分が知っている同級生の男子と変わらない。
やっていることも思っていることも、
最初のうちは「へぇ、けっこう普通の小学生じゃない」という感じ。
しかし成長して行くにつれて、
少しずつ少しずつ視点が変わり始めて、
ナンシー関に惚れ込んだことからだろう、
今の武田砂鉄が徐々に出来上がっていく。
巻末に近いnoteの閉鎖にまつわる話など、
数年前の出来事だから当たり前だが、
完全に出来上がった武田砂鉄であり、
その疑問の持ち方も今の感覚と変わりなく、
「それは当然のことだなぁ」とわかる。

クロニクルと呼べるほどではないが、
武田砂鉄というライターが昭和に生まれて、
平成に育って令和の今を迎えた、
その人生のかいつまみが実に面白い。
おそらく他人にとってはどうでも良いことも、
武田少年にはどうしようもなく気になり、
それが核となり徐々に育っていく。
例え武田砂鉄というライターの讀物を知らなくても、
ラジオパーソナリティとしての彼を知っていれば、
それは非常に興味深く写るはずだ。

いままで殆どの著作物を読んできたが、
正直この本を読み始めて、
「武田少年、可愛い」と思ってしまったw。
ラジオでも見せなかった素顔が、
ここにはかくも素直に描かれているとは、
予想もしていなかったので終始微笑みながら読んでいた。

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