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「マンボウ 最後の大バクチ」 [本]


マンボウ 最後の大バクチ (新潮文庫)

マンボウ 最後の大バクチ (新潮文庫)

  • 作者: 北 杜夫
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/08/28
  • メディア: 文庫


内容(「BOOK」データベースより)
鬱病で寝込むこと十年、ようやく元気になったのはよかったが、いきおいあまって、人生最後の躁病を発症してしまったマンボウ氏。老いてなお盛んな躁病に、ギャンブル三昧の旅が始まった。「猛獣使い」の女性編集者、スーパー元気な娘を相棒に、上山競馬場、大井競馬場、平和島競艇とバチク熱は急上昇、果ては韓国のカジノまで遠征することに。狂乱バブルのギャンブル紀行エッセイ。

北杜夫氏の著作を読むのは、
何年ぶりになるだろうか。
小学校高学年~高校生くらいまでは、
かなりの作品を読んでいた。
その頃はエッセイには余り興味がなく、
小説ばかりを追いかけていた。

当時から氏が躁鬱病であることは知っていたが、
エッセイにはそのことが書かれていても、
小説には無関係だったので、
特に気にしたことはなかった。
今そのエッセイを読んでみると、
なるほど、
長年病気とつきあい続けた患者とその家族の知恵がある。
解説でなだいなだし氏も書いているが、
同病の人にはなかなかに参考になる生活ぶりである。
因みに現在は躁鬱病とは呼ばない。
双極性障害と呼ばれているが。

しかしながら、
躁状態になる度にギャンブルで前借り金まですってんてんとは、
家族もたまったものではないだろう。
それでも上手く奥様は手綱を締めたり緩めたりしながら、
お嬢さんはその勢いに乗って一緒に遊んでみたりしながら、
ちゃんとお目付役も忘れない。
10年にもわたるうつ状態の反動だから、
その躁状態たるや大爆笑ものである。
本来病気の症状なので、
笑っては不謹慎なのかも知れないが、
躁状態の自分をネタに作品にすることも忘れない、
病気に溺れずつきあっていくそのしたたかさに、
もはや感心すると共に、
「自分もこうありたい」と思ってしまう。

流石に寄る年波には勝てないのか、
往事の勢いが筆に感じられないが、
語られるエピソードは爆笑、
懐かしい作家の横顔は落涙もの。
肉体的に精神的にもいろいろ大変そうだが、
良い家族や編集者たちに囲まれて、
幸せそうで良い老後ではないか。



余談だが、
今は絶版となっている「輝ける碧き空の下で」は、
ブラジル移民を詳細に取材して描いた傑作である。
古本でも入手困難であるが、
ぜひとも読んでみて欲しい一作である。
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