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「出会いがしらのハッピー・デイズ―人生は五十一から〈3〉」 [本]


出会いがしらのハッピー・デイズ―人生は五十一から〈3〉 (文春文庫)

出会いがしらのハッピー・デイズ―人生は五十一から〈3〉 (文春文庫)

  • 作者: 小林 信彦
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2004/05
  • メディア: 文庫


内容(「BOOK」データベースより)
とにかく腹の立つことばかり多い今日この頃だが、かつてしあわせだった日々もあったのだ、それもついこのあいだの話。あの街この街にしあわせな記憶があるからこそ、失われてゆくものへの悲しみがにじむ。われわれはどこへ向かおうとしているのか。「週刊文春」連載エッセイ「人生は五十一から」文庫化第3弾。

10年前、まだ20世紀だった。
まずこの事実に思わず驚愕した。
私たちはまるで生まれたときから21世紀に存在していたかのようではないか。
2000年に日付が変わる瞬間、
電気の供給が止まるのではないか、
石油ストーブが飛ぶように売れて、
ミネラルウォーターが店頭から消えた。
懐中電灯を手にして迎えたそのとき、
「世はこともなし」であった。
お粗末、ちゃんちゃん、と。

このクロニクル・エッセイにあるように、
ちょうどこの頃から街中の小さな店が消え始めた。
きめ細かく個人の注文に応じる書店、
コンビニではない酒屋、
八百屋、魚屋、肉屋、
ついでに公衆電話も減り始めた頃だろう。
インターネットの普及率が飛躍的に上がり始めた頃と、
ちょうど一致するのではないだろうか。
筆者はそのことに言及していないが、
おそらく私自身もNET通販を利用し始めた頃、
店頭をぶらつかなくても目的の本を簡単に見つけ、
家まで配送してもらえる便利さの恩恵に浴し始めた頃だ。
ただ、外回りの仕事をしていたおかげで、
閑つぶしというか時間つぶしのために、
あちこちぶらぶらしてもしたのだが。

筆者は本当にイーストウッドの魅力に惚れ込んでいる。
一筋縄でスターになり得たわけではなく、
回り道をしながらここまでやってきた彼の、
役者としての力も演出者としての力も、
ぞっこんと言えるくらいにべた褒めだ。
そしてそれは「古き良きハリウッド」の手法に、
絶賛を送っているとも言える。
GCまみれの映画が悪いとは書かない。
けれど伝統的な間の取り方や遠近法の美しさを、
筆者は愛してやまないのである。
現代の役者の力は認めているけれど、
どこかで人間が工夫を凝らしてきた手法や、
人間だからこその間合いの取り方を懐かしんでいる。
「年寄りの懐古趣味」と呼んでしまえばそれまで。
だけどそこでその時代の映画を観ているなら思い出したり、
「一度観てみよう」と思い立ってくれれば、
それは文化の継承に他ならないのではないか。
個人的には割合古い映画は観ている方だと思うので、
「ああ、なるほど」と思うことが多い。

10年一昔とは言うけれど、
10年前はこんな風だったのかと、
実にしみじみと感じるところが多かった。
何よりも、
「10年前は健康だったのだなぁ。」と思うのと同時に、
この10年の歳の取り方は大きいのだと実感した。
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