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「哀れなるものたち」 [映画]



風変わりな天才外科医ゴドウィン・バクスター(ウィレム・デフォー)の手によって死から蘇った若き女性ベラ(エマ・ストーン)が、世界を知るために大陸横断の冒険の旅へ出る。時代の偏見から解き放たれたベラは、平等と解放を知り、驚くべき成長を遂げていく―。

いつもいつも不穏な空気で、
なんとなくいや~な感じが残るヨルゴス・ランティモス監督。 
今回はいかがなるものか、
予告から「これはフランケンシュタインの物語」と思ったから、
興味津々で封切りを待って一番に乗り込んだ。

予想通りというか、
想像以上に面白くて素晴らしい映画だった。
身重で身投げを図った女性の脳に、
胎児の脳を移植して生まれたベラ。
身体は成熟した女性、
知性はまだまだ赤ん坊の彼女、
ぎこちない動きと子どもの好奇心をむき出し、
父の実験台になりながら育った医師ゴッドの予想を超えて、
急速に成長していくベラに、
周りの男たちは翻弄されていく。
子どもの心のまま純粋に快楽を幸せと感じ、
幸せを求めていくベラ。
娼婦として数多くの男と交渉を持ち、
少しずつ人間としての幸せをわかってくるベラ。
その彼女が最後につかみ取る幸せとは?

エマ・ストーン体当たりの熱演。
赤ちゃんってああいう目つきや行動をとる! 
でかい身体でそれをやるから、
コミカルなだけじゃなくて、
それがなんとなく怖くもある。
事情を知るものには至極当然のそれも、
スケベオヤジからは誘惑に見える。
彼女は美しく純粋で欲望に正直。
フランケンシュタインの怪物同様、
読書好きだし好奇心旺盛。
そして聡明。
「フランケンシュタイン」でロバート・デ・ニーロが演じた怪物と反対に、
自ら幸せを求めて放浪を続けて、
その魅力で多くの人を虜にして、
羽ばたいていく様がとても象徴的。
やり過ぎじゃねーの?って言うくらいに、
ウィレム・デフォーもエマ・ストーンもマーク・ラファロも熱演。

この奇抜で美しい物語を彩る、
セットや衣装がまた飛び抜けて素晴らしい。
アカデミー書には11部門でノミネートされているが、
衣装と美術と監督賞はこの映画がふさわしいのではないか。
とにかく「女王陛下のお気に入り」同様、
とんでもない世界ととんでもない美しいものと、
とんでもない因業な人間の性を見せられる。
その意味では究極の映像作品だ。

でも私は好き。
こんなにも純粋な女性を素直に演じられて、
素直に女性として目覚めていくのを表現するのは、
見ていて気持ち良いし途轍もない驚き。
「バービー」が目覚めることで、
真実の女性になる様に、
ベラもまた生まれ変わって真実の女性になる。
真実の愛もまた得るためには、
女性が自ら探検に行く。

世界は本当に変わった。
変わらないのは日本だけだ。



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