SSブログ

「キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性」 [WOWOW]



■映画業界の最も重要な仕事の一つでありながら、最も知られていない仕事=キャスティング
本作はハリウッドで長年活躍したキャスティングの先駆者マリオン・ドハティ(1923-2011)を中心に、キャスティング(配役)という仕事に迫るドキュメンタリーです。
絶妙なセンスと直感的な先見の明を頼りに、白人男性至上主義が根強く、役者を単純にタイプ分けしていた古いスタジオの配役方法から、ユニークで多彩なアンサンブルキャストへ移行する道筋をつけ、革新的なアメリカン・ニューシネマの到来を告げたマリオン。
驚きと笑いに溢れたエピソードの数々、そして切なくも感動的なラストまで…その人生を通して映画史に新たな光を当てます。

正確に言えば、
「キャスティング・ディレクター」という名称は映画界では使われてこなかった。
映画で重要な配役を担当するにもかかわらず、
なにゆえ彼女たちには日が当たらなかったのか。
実際には監督からも俳優からも信頼され、
彼女たちの存在なくして、
ハリウッドのスターダムシステムとは違うやり方で、
新しい才能を見つけて起用することはかなわなかっただろうに、
賞賛されることから縁遠いままだった。
そしてその名称でさえも、
「キャスティング」は許されて「キャスティング・ディレクター」は許されない。
なぜなら「ディレクター(監督)」という呼び名は、
監督だけのものだという監督からの異論があったから。

出てくる俳優や監督たちはそうそうたる面々。
その彼らが賞賛を惜しまないマリオン・ドハティ。
そう、その仕事の実績を知ればしるほどに、
彼女の才能とその思慮深さと配慮に心惹かれる。
多くの才能を見出してきたからこそ、
彼女なしでは今の映画界はあり得なかった。
今、映画を観ると、
比較的早い段階のクレジットに「キャスティング」が表示される。
正直言ってその仕事内容を知らなかったので、
このドキュメンタリーを見て「なるほど」と思うと同時に、
監督も俳優もこの「キャスティング」担当者を味方につければ勝ったも同然だ。
実は最近その「キャスティング」が非常に気になった映画があった。
「ザリガニの鳴くところ」だ。
所謂大物は全く出ていない。
しかしそれぞれの登場人物がこれ以上ないと言うほどはまっている。
所謂スター頼みの映画とは全く違う、
映画の力で魅せる映画だったからこそ気になっていた。

その歴史を切り拓いてきたマリオン・ドハティ、
その実績は驚くべきものであり、
驚くべき俳優たちが彼女の目にとまったことで表舞台に立った。
もちろん彼女自身の努力や勉強もあっただろうが、
やはりものを言ったのは彼女の人間観察力だろう。
そして実績を積み重ねることによって寄せられる信頼。
彼女はそれをすべて武器にしてキャスティングを行った。
彼女の仕事には全く日が当たらなかった時代から。
彼女が自信の会社でその仕事を広め、
映画業界にその役割の重要さを知らしめると、
彼女たちの仕事の重要性を認識しながらも、
賞の対象とはならないようにする旧態依然たる監督たちが立ちふさがる。
やはり旧弊たる白人至上主義とジェンダーの問題はあるのだ。
そして何よりも「映画は監督のもの」という考え方も。

映画の最後に寄せられる賛辞、
それがマリオン・ドハティの仕事のすべてを物語る。
これからはキャスティングが誰か、
そのことに注意しながら映画を観てみようという気になる。

コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。