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「精神0」 [映画]



[新月]?[新月]想田和弘監督『精神0』5/2(土)より公開[新月]?[新月]
第 70 回ベルリン国際映画祭〔フォーラム部門エキュメニカル審査員賞〕受賞
ニューヨーク近代美術館(MoMA)Doc Fortnight2020 正式招待
想田和弘監督最新作『精神0』(せいしんゼロ)。
2020年5月2日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムを皮切りに全国公開!
* * * * * * *
「こころの病」とともに生きる人々がおりなす悲喜こもごもを鮮烈に描いた『精神』から 10 年???映画作家・想田和弘が、精神科医・山本昌知に再びカメラを向けた。
『精神』(08年)の主人公の一人である山本昌知医師が、82 歳にして突然「引退」することになった。様々な生きにくさを抱えた人々が孤独を感じることなく地域で暮らしていける方法を長年模索し続けてきた。彼を慕い、「生命線」のようにして生きてきた患者たちは戸惑いを隠せない。引退した山本を待っていたのは妻・芳子さんと二人の新しい生活だった…。精神医療に捧げた人生のその後を、深い慈しみと尊敬の念をもって描き出す。

残念ながら渋谷シアター・イメージフォーラムも、
その他の映画館も今はどこも開いていない。
その代わり「仮説の映画館」からVimeoを利用して観ることが出来る。
ChromecastやAmazonFire TVを利用すればTVの画面でも観られる。
もちろん映画館の空間と画面には及ばないが、
このシステムを利用することで、
閉鎖している映画館にもお金が落ちる。
ミニシアターにはクラウドファンディングと共に、
少ないながらも収入を得る手段である。
逆に近くに観られるミニシアターがない人にとっては、
家にいて封切り直後から観られる良いシステムとも言える。

引退を決めた山本医師に、
患者たちはこれからの不安を必死で訴える。
ある病院では「クスリは飲んでいますか」「じゃ処方しておきますね」で終わりだと。
そんな患者たち一人ひとり山本医師は言う。
「貴方は誰よりもがんばってきた。 
 死ぬ生きるの場面を生き抜いてきた。 
 貴方のお父さんも大変だっただろう。 
 貴方のお母さんも大変だっただろう。 
 でも誰よりも頑張って生きたのは貴方だ。」
この言葉は魔法の言葉だと思った。
健常者は自殺念慮や罪業念慮が理解できない。
どうしようもなく自分を責める気持ちがわからないから、
「病気だから仕方ない」で片付ける。
当事者がどれほど苦しいか想像もできないから理解もできない。
でも死にたいという気持ちや自分を責める気持ちと、
当事者は戦いながら日々を生き延びるために必死なのだ。
そのことをわかってくれる人がいる、
そのことがどれほど当事者を救うことか。
褒めて欲しいわけではない。
ただ当事者なりに必死にがんばっていること、
そのことをわずかでも良いからわかると言って欲しいのだ。
あの真っ暗な地獄での気持ちを理解できるはずがないことは、
当事者が一番よくわかっているから。

そんな山本医師が引退を決めたのは、
自分を支えてきてくれた妻を、
認知症となった妻を支えようとしたからだろう。
老夫婦の家の中を遠慮なく映し出すカメラの映像に、
「ああ、歳を取って暮らすと言うことはこういうことなのだ」と現実が迫る。
患者たちがいない二人の生活は、
所謂「穏やか」とは少し違うものである。
妻と一緒に行動しながら、
なれない生活を老いた身体でこなして行く山本医師。
それまで患者と向かい合っていた精神は、
妻の方向へと転換されている。
まなざしも妻へと優しく注がれる。
中学の頃からの知り合いだという二人は、
ともすれば夫婦と言うよりは同志のように、
人生を生きてきたのだろうと想像する。
そしてある意味無私で患者と向かい合っていた夫とは別に、
妻はまったく違う顔を持っていることも語られる。
実にうまくかみ合った夫婦であることが、
知人の口から語られる。

このドキュメンタリーは、
「人生フルーツ」と双璧をなす、
夫婦の生きてきた軌跡と純愛を映し出す作品である。
前作とは全く違う作品であり、
前作で心に重いものを感じた私でも、
全く違う気持ちで観られた。

「精神」を観ていない人も、
これは全く違うテイストの作品なので、
ゆったりとした気持ちで味わって欲しい。

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