「ある女流作家の罪と罰」 [映画]
<ストーリー>
かつてベストセラー作家だったリーも、今ではアルコールに溺れ、仕事も続かず、家賃も滞納、愛する飼い猫の病院代も払えない。生きるために著作を古書店に売ろうとするが店員に冷たくあしらわれ、かつてのエージェントにも相手にされない。どん底の生活から抜け出すため、大切にしていた大女優キャサリン・ヘプバーンからの手紙を古書店に売るリー。それが意外な高値で売れたことから、セレブの手紙はコレクター相手のビジネスになると味をしめたリーは、古いタイプライターを買い、紙を加工し、有名人の手紙を偽造しはじめる。様々な有名人の手紙を偽造しては、友人のジャックと売り歩き、大金を手にするリー。しかし、あるコレクターが、リーが創作した手紙を偽物だと言い出したことから疑惑が広がり……
リーの焦りとやるせなさが痛いほどわかる。
「こんなはずじゃなかった」
人生はやり直せないけれど、
今の自分がこんな風になっているなんて。
その気持ちが私にはわかった。
だから彼女が窮地を脱するために思いついたこと、
それは彼女ならではの才能を活かして、
ちょっとした智恵を活かしただけのはずだった。
呆気なく騙される人たちをバカにしながら、
自分のその才能をちょっと誇りに思ったはず。
それが犯罪であったとしても。
若い子には理解できないかも知れない。
偶然友人となったジャックと共に、
マイノリティとして社会の片隅で生きて、
ほんのちょっとの虚栄心と実益を満足させるために、
彼女がやったことは彼女の才能を証明し、
結果的には好事家の虚栄心も満足させた。
そんな中年から老年にさしかかった男女の心の機微、
同年代じゃないと理解しがたいだろう。
だからこそ私には痛かった。
リーの不貞不貞しいまでの図太さに、
共感できない人も多いかも知れない。
でもアレが彼女だし、
ああしなければ自分を保てない。
そんな生き方もあるのだ。
哀しいけれどそれが生きていくために必要なこともある。
観る人によってはただの犯罪者、
でも私には共感できる犯罪者。
地味だけどちょっと心がガクッと動いた。
彼女には才能があった。
そのことが救いだった。
2020-04-26 20:56
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