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「ユリイカ2023年6月号 特集=A24とアメリカ映画の現在」 [雑誌]




ヴェールに覆われた眼差しが見つめる「ヴィジョン」
およそ10年前に設立されて以来、独自の存在感を放ち続けているA24。作品の「ヴィジョン」の精査に基づくキュレーション、ソーシャルメディアを活用した独創的なマーケティング、そしてそれらを「A24」らしさとして印象づけるブランディングは、いまやZ世代をはじめとする広範な層にリーチし、個々の作品の枠組みを越えたファンダムを形成しているように見える。第95回アカデミー賞で11部門にノミネートされ、作品賞・監督賞をはじめとする7部門を受賞したことにより大きな注目を集めた『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2023年)をはじめ、多くの作品を送り出してきた A24が見据える「ヴィジョン」は文字通り幻であるのか、あるいは「アメリカ映画」の未来を開拓する賭けとなり得るのか、今こそ見極めたい。

A24を意識し始めたのはいつだったか。
「ムーンライト」の時はんの意識もしていなかった。
おそらく「フェアウェル」「ミッドサマー」、
この辺りからだと思うので、
まだ5年くらいしか経っていないと思う。
しかしその間にA24が関わっていると、
なんとなく期待して観に行くようになっていた。
ちなみに大好きな鵠沼海岸のミニシアター「シネコヤ」も、
A24の作品の多くがかかるので、
一番館で見逃しても観られることが多い。

A24が提供する作品の多くが、
アメリカ作品でありながらアメリカらしくない。
それが際立った特徴に思えた。
マイノリティを扱っていることが多かったり、
同じホラーでもアメリカンな定石を踏まず、
そこには何かしらの因縁と哀しみが漂う。
「X(エックス)」は最初「なんだ、アメリカのホラーじゃん」と思わせておいて、
あり得ない殺人鬼と若者の二役や、
とんでもない動機が待ち受けている。
マイノリティたちは哀しみよりも、
逞しく生きるために必死になり、
それでも世界は裏切り続け、
それでも彼らは自分達の生きる場所を見つけ、
自らのアイデンティティーも見失わない。

こんなことを私が書くよりも、
この本を手に取ってもらうのが一番だが、
近年映画館に足を運んだ人の中にも、
A24の名前を知らない人もいるだろう。
インディーズ映画を主な場として、
制作、配給を行ってきており、
ハリウッド超大作くらいしか劇場では観ない人には、
おそらく「エブエブ」で初めて知るくらいの感じだろう。
そう言う映画の選択をしている人たちに、
振り返って観てくれというのは酷だし、
A24の映画の特徴として、
精神や神経をさわさわとなでられながら、
最後に小石を一つ残していくような特徴があるので、
この感じがわかって好きな人じゃないと辛いかもしれない。
しかし彼らはこの第95回アカデミー賞で大きく変わった。
「エブエブ」「ザ・ホエール」で主要な賞を総なめにした。
そして一時はどん底にいた俳優たちを受賞の場に引き上げた。

なぜそんなことができたのか? 
 
そこにはハリウッドメジャーとは違う、
彼らならではの作品選びや監督選び、
その特徴が際立っている。

実のところ、
私は「エブエブ」がものすごく好きかと言えばそうでもない。
A24の関わった映画で一番好きなのは「カモン カモン」。
そして不思議なことに心を掴んで離さないのが、
「MEN 顔のない男たち」だ。
実にひっそりと公開されて、
ひっそりと終わっていった作品だが、
心に不穏な波紋を描く小石を残した。
おそらくA24が好きだという人は多くても、
その好みの映画は様々だろう。
だからこれから意識する人にとっては、
最高とは言わないが良い入門書だし、
注目してきた人にとっては、
自分が感じてきたことに対する答えやヒントがある。



ハリウッドメジャーの時代は終わったかもしれないが、
彼らにしか作れない作品があることも確か。

要は棲み分けなのだが。 

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