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「朝鮮大学校物語」 [本]


朝鮮大学校物語 (角川文庫)

朝鮮大学校物語 (角川文庫)

  • 作者: ヤン ヨンヒ
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2022/06/10
  • メディア: 文庫


自由が故のしんどさなら、挑む価値がある──。分断を超えていく少女の物語
「ここは日本ではありません」全寮制、日本語禁止、無断外出厳禁。18歳のミヨンが飛びこんだ大学は高い塀の中だった。東京に実在するもうひとつの〈北朝鮮〉を舞台に描く、自由をめぐる物語。解説・岸政彦

友人から進められて「かぞくのくに」を観た。
同じように「スープとイデオロギー」を観た。
どちらも激しく心を揺さぶられて感動した。
その友人からこの本も進められたので信じて読んでみた。

そこは全く知らない世界だった。
朝鮮大学校。
北朝鮮の在日子女のための学校。
北朝鮮のために人材を育てるための学校。
全寮制の大学校の中は北朝鮮。
偉大なる国家元首をたたえ、
そのために努力し生きることを誓う。
両親が朝鮮籍を選んだがゆえに、
ミヨンはこの学校に入れられる。
彼女は演劇や映画にあこがれて、
大阪から東京に来られたことを喜んではいたが、
その窮屈な生活に驚きながらも、
自分が信じる方向に向かって歩み、
問題児となりながらも自分の生きる道を定めていく。

ヤン・ヨンヒ監督自身を思わせるミヨン、
甘酸っぱい初恋は、
その相手が朝鮮人であることに何の偏見も持たず、
ごく自然に受け入れてもらえたことは幸いであった。
一番偏見に満ちているのは、
学内の教師たちであり、
無理やり北朝鮮の思想に染めて、
偉大なる指導者のために生きることを強要することだ。

「イムジン河」などのエピソードから、
朝鮮学校の話は読んできたが、
内部の人間による、
詳細に描かれたその方針と思想はやはりショッキングだった。
その中で決して染まることなく、
自分の頭で考えておかしいことはおかしいといい、
意に沿わないことには従うことをしないミヨンの強さは、
青春小説としても励まされるものだろうし、
そのまっすぐさに感動するだろう。
結果としてミヨンがどういう道を選ぶのか、
それはある意味「かぞくのくに」とは対照的で、
兄弟のことがあるからこそ、
北朝鮮訪問でやっと会えた姉のことがあるからこそ、
ピョンヤン駅で見かけた現実があるからこそ、
彼女は自分の歩む道をしっかりと自分で決める。
そしてその先で再び交わりあう縁。
なんと心地よく温かく素晴らしい生き方なのか。

最初陰鬱な感じのする学校の状況から始まったので、
どうなるかと思っていたら、
ミヨンの自分を曲げない生き方と、
好きをあきらめないまっすぐさに救われる。
こんなにも気持ちのいい話と読後感になるとは思わなかったので、
余計に感動したし、最高だと思える最後だった。

ヤン・ヨンヒ監督を紹介してくれた友人には、
ひたすら感謝。

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