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「日本橋に生まれて 本音を申せば」 [本]


日本橋に生まれて 本音を申せば

日本橋に生まれて 本音を申せば

  • 作者: 小林 信彦
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2022/01/26
  • メディア: 単行本


「映画は子供のころから見ていた。東京は日本橋区の生れで、和菓子屋の九代目の長男で、親や番頭に可愛がられながら育ったから、そういうことになる。」
自らをそう振り返る小林信彦さんが、折にふれて観なおす名画の話。八十何年かの人生をいろどる幸福な出会い。名著に加筆を施した『決定版 日本の喜劇人』のこと・・・。
「週刊文春」で23年連載された名物コラム『本音を申せば』シリーズが、本書をもって完結します。
第一部「奔流の中での出会い」は、野坂昭如さん、山川方夫さん、渥美清さん、植木等さん、長部日出雄さん、大瀧詠一さん、江戸川乱歩さんなど、ひときわゆかり深い17名の思い出。
第二部「最後に、本音を申せば」は、2021年のクロニクル。NHKBSプレミアムで放映される映画のラインナップが上質なのに感心し、『日本の喜劇人』に加筆して「決定版」を刊行された年でした。
「数少い読者へ」と題した最終回が「週刊文春」に掲載されると、愛読してこられた読者の方々からのお便りが、編集部に続々と寄せられました。長年のご愛読に感謝しつつお届けする最終巻。平野甲賀さんのフォントを題字に使用し、本文挿絵は小林泰彦さんです。

読み終えてしまうのが惜しかった。
読み終えてしまうのが怖かった。
これで終わりなのだと思うと寂しかった。

いつもなら一気に読んでしまうクロニクルエッセイも、
ぽつぽつと雨だれのように読み進め、
読みたい本が他にある時(常時だが)は、
そちらを読んでこちらを止める。
「本音を申せば」が終わってしまうのが悲しくて、
いつか終わるとわかっていたし、
筆者が脳梗塞をしてからは「いつか」と覚悟はしていたが、
それでも受け入れるのはつらかった。

週刊文春での連載はとうに終わっていたわけだが、
私は毎年刊行される単行本を楽しみにしていたので、
なにか週刊文春を買う用事があれば読む程度。
前年の映画や出来事を振り返るのが楽しみだった。
その楽しみがこれで終わってしまうのかという思いは、
考えていた以上に覚悟ができていない自分を思い知らされた。

脳梗塞を患われてから、
当然行動することが制限されるから、
どうしても日常の暮らしのこと、
テレビなど身の回りのことが中心になる。
そのことは理解していても、
なかなか受け入れがたいというか、
それまでの筆者の暮らしと比べてもの悲しさを覚えていた。
もちろん今年も変わりない。

「クロニクルがクロニクルじゃなくなったな」

今年の文章は読んでいてそう思った。
だからこれがいいころ合いだったのだ。
筆者の健康状態や年齢のことも鑑みれば、
いつまでも同じでいられるわけがない。
本を閉じたときに「終わった」という思いは、
「ありがとう」という思いと同時訪れた。

思えばこのクロニクルエッセイとの出会いは、
私がうつ病で自宅療養していた時、
新刊を買う経済力はなかったので、
毎日のようにブックオフをふらついているときだった。
「人生は五十一から」
文庫になっていたそれを手に取ってすぐさま購入することにした。
筆者の名前は存じ上げていたが、
不勉強なことに文章を読んだことがなかった。
しかし読み始めたら相性の良さだろう、
次々とブックオフで探し出して読み続けた。
再度働くことができるようになり、
少し高い本が買えるようになってからは、
毎年刊行されるハードカバーも買うようになった。
筆者のほかの作品も探し出して追いかけて読んだ。
気が付けば私自身がいつの間にか五十一をはるかに超えた。

映画と喜劇とラジオを愛し、
その世界のいろいろな見方を教わった。
本当に長い間お疲れさまでした。
また新しい文章に出会えることを楽しみにしています。



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