SSブログ

「名もなき生涯」 [WOWOW]



【STORY】第二次世界大戦時、ヒトラーへの忠誠を拒絶し、ナチスに加担するより自らの信念に殉じた一人の農夫がオーストリアに実在した。彼の名はフランツ(アウグスト・ディール)、山と谷に囲まれた美しい村で、妻のフランチスカ(ヴァレリー・パフナー)と3人の娘と暮らしていた。戦火が激化し戦争に駆り出された彼は、ヒトラーへの忠誠を頑なに拒む。直ちに収監され裁判を待つフランツを、フランチスカは手紙で励ますが、彼女自身も村でひどい仕打ちを受け始める──。

日本公開されるしばらく前に町山さんが紹介。
特に話題になった覚えもなく、
ただその時に題名が妙に残っていて、
WOWOWで放送されたとき録画しておいた。
3時間弱という長尺に、
今まで放置してしてきたのだけれど、
なんとはなしに「今日は良いかも」と。

で、驚いた。
この作品、メディア化されていない!
いや、まぁわかる。
3時間ものすごく地味な話で、
併合されたオーストリア人が、
ヒットラーには忠誠を誓えないからと、
召集されても兵役を拒否し続ける話。
妻との書簡のやりとりを台詞として、
あとは愉快なシーンはとにかくない。
日本では興行的にも苦しいだろうけど、
更にメディアはもっと売れないか。

カソリックとして、
ヒトラーのやっていること、
戦争そのものが信仰に反する、
或いは信念に反するとして、
頑固にその思いを貫いて死刑になる男、
妻は残された村でも村八分になり、
精神的にも肉体的にも苦痛を強いられる。
それでも男は信念を曲げない。
死刑を宣告されたあと妻と面会しても、
「理解してくれ」「わかってくれ」。
正直言って自分なら「わからんわ!」ってテーブルひっくり返す。
オリャ!!(ノ´□`)ノ ┫:・'∵:.┻┻:・'.:┣∵・:. ┳┳☆ピタッ☆
妻と3人の娘とあんたの母親はどうなるんじゃい!って。
ヒトラーがああいう最期を遂げて、
第三帝国が終わったあとになれば美談だけど、
当事者と関係者からすれば、
現実的に生きるのは大迷惑。

ただ最後の字幕に出るように、
こうした人々の命と抵抗があったからこそ、
物事はさほど悪くは転がらないとも言える。
それを読んだときに思った。
今は小さな声でしかなくても、
「あの時、あの声が上がったから」
そう思えるときがやがて来るのだと思えば、
今の日本でもそれは無駄なことではないのだ、と。

信仰心がない私には、
本当に「良い加減にしろよ」と思うときもあるが、
その言葉に最後は救われる。


そして何よりこの映画、
映像の美しさが際立っている。
ただきれいなだけではない。
ものすごく心に染みいる自然の美しさなのだ。
不思議に思って調べてみたら、
照明を使わず自然光だけで撮影しているそうだ。
つまり我々が普段自分の目で見ているのと同じ、もしくは近い、
そう言う映像だから自然と心に訴えてくるのだ。
ストーリーは地味でつらいものではあるが、
映像の美しさと子役の可愛さと、
ほんのちょっとした優しさや親切に救われて、
3時間弱を乗り切ってしまう。

つくづくテレンス・マリックと言う人、
商業的には難しい監督だ。
これが実話なんだと言うから、
本当に驚きだし、
それを映画にしてしまうのだから、
マジで参った人である。


コメント(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。