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「あしあと ちばてつや追想短編集」 [マンガ]


あしあと ちばてつや追想短編集 (ビッグコミックススペシャル)

あしあと ちばてつや追想短編集 (ビッグコミックススペシャル)

  • 作者: ちばてつや
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2021/04/30
  • メディア: Kindle版


ちばてつや、23年振りの最新短編集!!
巨匠・ちばてつやの23年振りとなる短編集! 
戦後の満州引き揚げを描いた「家路 1945-2003」、漫画家デビュー時に謎の体調不良にさいなまれた日々を描く「赤い虫」、トキワ荘グループとの交流のきっかけとなった”事件”を描く「トモガキ」、そして最新発表作となる、名作『のたり松太郎』誕生前夜を描いた「グレてつ」といった、2000年以降に描かれた氏の貴重な自伝的読み切り作品を、掲載当時のカラーを含め完全収録!

「たまむすび」のワンコーナー。
ブルボン小林の「マンガ、ときどき本」で今月紹介された短編集。

私はちばてつやを愛読したことはない。
もちろん巨匠であるし、
何作もスゴイ作品を生み出している。
しかし触れる機会がなかった。
アニメの方は「ハリスの旋風」「あしたのジョー」など、
子供のころは観ていたのだが。
しかし今回ブルボンさんの紹介が素晴らしくて、
と言うかこのコーナー、
ついつい毎月気になってしまうことが多くて、
先月はブルボンさんの新刊まで買ってしまったわけで。

何にそんなに惹かれたかと言えば、
満州からの引き上げの話。
散々母から聞かされた引き上げの話は、
今も知りたい歴史の一つ。
そして原稿を落としそうになった時、
(正直言ってものすごい理由だ)
トキワ荘の人たちがみんなで原稿を仕上げた話。
そのどちらもが興味を惹いた。
「来る途中読みながら来たんだけど、 
 電車の中でうるっと来ちゃって。」
ブルボンさんがそう言うのだからそりゃ読みたくもなる。

喰わず嫌いとは恐ろしいもので、
今まで印刷物で触れてこなかったちばてつや氏の絵柄、
もう開いた瞬間から引き込まれた。
この絵柄の持つ温かさとマンガとリアルさの融合、
その素晴らしさに想像以上に入り込んでしまう。
満州からの引き上げについては、
子供の目から見た状況ではあるが、
それでも子供はしっかりと見ていたのだ。
その表現は劇画のように陰惨ではないが、
充分過ぎるほど当時の厳しさが伝わる。
そして引き揚げ船での話は母親の話とピッタリ重なった。
浅草の「まんしゅう母子地蔵」については初めて知った。
コロナ禍がおさまったら、
一度是非行ってみようと思った。

「赤い虫」「トモガキ」は、
あの時代だからこその物語であり、
マンガという文化がうなぎ登りに人気を得て、
週刊誌の創刊や若いマンガ家たちの台頭、
その輝かしい時代の物語。
「赤い虫」はその輝かしさの裏で、
著者が如何に大変な思いをしていたのか、
それがどんなことになっていたのか。
「トモガキ」は若いマンガ家たちが、
面識もない著者のために必死になり、
1本のマンガを仕上げることで、
彼らが後に交友を深めていく物語。

どれも「追想」ではあるが、
どれも今の時代でも心に染みいり、
何ともいえない感慨を呼び起こす。

ブルボンさんに紹介されなければ、
決して手にしなかったと思うので感謝である。
この素晴らしい追想を語り継ぐ。
それはこの傑作を読むことで可能であるし、
これからも読み継がれていくことだろう。
遠い話になりつつある時代ではあるが、
忘れてはいけない時代のことを、
私たちは引き継いで語る責任がある。

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