「永い言い訳」 [ストリーミング]
【収録内容】
人気作家の津村啓こと衣笠幸夫(きぬがささちお)は、妻が旅先で不慮の事故に遭い、親友とともに亡くなったと知らせを受ける。
その時不倫相手と密会していた幸夫は、世間に対して悲劇の主人公を装うことしかできない。
そんなある日、妻の親友の遺族―トラック運転手の夫・陽一とその子供たちに出会った幸夫は、ふとした思いつきから幼い彼らの世話を買って出る。
保育園に通う灯(あかり)と、妹の世話のため中学受験を諦めようとしていた兄の真平。
子供を持たない幸夫は、誰かのために生きる幸せを初めて知り、虚しかった毎日が輝き出すのだが・・・。
ずっとずっと長いこと、
「観たい」「観なくちゃ」と思っていた。
だけど何処かで勘が働いて、
「これは気軽に観るものじゃない」と思っていた。
だから今まで手をつけられなかった。
でも「すばらしき世界」を観て、
「今こそ対峙すべき時」と決心。
思った通りだった。
幸夫は私だった。
余りにもよく似ていた。
母が亡くなったときに、
心臓発作を起こした母のベッドの横で、
賢明に心臓マッサージを続ける医師や看護師を見つめながら、
「もう勘弁してくれ」と願っていた。
8年余りの介護生活に疲れた20歳の女は、
例え心臓が動いても意識は戻らないであろう母親の死を願った。
あの時から私は人の死に涙を流せなくなり、
喪の仕事ができない人間になった。
後ろめたさからだったのかはわからない。
そしてあの時から「すばらしき世界」の三上のように、
正義感はあっても自分をどうしたら良いかわからず、
自分を大事にすることがわからなくなった。
途中不意に現れた女性の存在に、
拗ねることしかできない幸夫はまさしく私。
情がないわけじゃない。
自分を律することができないわけじゃない。
だけどどうにも自分を止められない瞬間がある。
そんな幸夫の中に自分を見ていた。
妻の親友の夫の素直な感情の吐露とは別に、
何処かで装っていて自分をさらけ出せない幸夫、
でも子供たちの世話を焼きながら可愛がる幸夫、
子供たちの世話役を買って出た女性に焼き餅を焼く幸夫、
何よりも妻の死を素直に悲しめない幸夫こそ私。
「すばらしき世界」「永い言い訳」と観たことで、
自分の自覚していながら、
どうにもできなかった本質、
何がどうしてそうなったのか、
その総てを突きつけられた気がする。
人生の大半を人として最低に生きてきた。
それがわかったから、
これからどうすべきか考えなければ。
西川監督に自分の人生を見透かされた気がする。
いや、もしかしたら、
こんな人間は珍しくないのかも知れない。
2021-02-11 20:31
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