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「市が尾の坂ー伝説の虹の三兄弟」 [舞台]



田園都市開発の時代。
市が尾の坂に住む三兄弟と、
近所に引っ越してきた画家の人妻と家政婦。
26年前の初演時の配役は、
長男竹中直人、次男田口トモロヲ、三男温水洋一、
人妻荻野目慶子、家政婦片桐はいり。
今からでも観られるものなら、
この配役でも観てみたい。
今回の大森南朋、三浦貴大、森優作、麻生久美子、池津祥子とはまた違う、
市が尾の風景があっただろう。

ともあれ、この舞台。
一番の目的は南朋さんを観られることと、
岩松了の演出だったのだけど、
最近TVや映画で重い役が多かった南朋さんの、
明るい狂言回しのような長男が、
意外すぎるほどはまっていて、
実に楽しませてもらえた。
一番普通の次男は次男で、
空気を読むが故に一人苦闘。
末っ子は末っ子特有の自己主張。
それを我知らず引っかき回す人妻。
そしてある意味確信犯的に引っかき回す家政婦。
時折流れる気まずい空気。

この舞台の見所は、
この「気まずい空気」が流れる時間だと思った。
長男がおどければおどけるほど三男はへそを曲げ、
次男は空気を戻そうと普通に振る舞う。
なさぬ仲の子供との関係に悩む人妻は、
悪気もなく空気をかき乱す。
更に家政婦がその空気を澱ませる。

基本的な笑えるのだが、
その合間に流れる微妙な空気と間に、
観客が緊張するのがよくわかる。

そもそもコントライブにばかり行っているので、
こうした舞台をちゃんと観るのははじめて。
正確にはラジカルの流れを汲まない舞台だが。
終演後がああいうものだと言うことも知らなかった。
もっとも余韻という意味では、
あれがあるべき姿なのかも知れないが。

30年以上も前、
私もまた田園都市線を利用していた。
懐かしい地名がどんどん出てきて、
自分も一瞬タイムスリップ。
微妙に時代を超えたこの舞台。
その微妙さが妙に心に染みいった。

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