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「増補版 ぐっとくる題名」 [電子書籍]


増補版 ぐっとくる題名 (中公文庫)

増補版 ぐっとくる題名 (中公文庫)

  • 作者: ブルボン小林
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2021/05/10
  • メディア: Kindle版


●第1章 ロジック篇 
【助詞の使い方】「ゲゲゲの鬼太郎」「無能の人」「僕が泣く」
【韻とリズム】「ヤング島耕作」「勝訴ストリップ」「噂の刑事トミーとマツ」
【言葉と言葉の距離(二物衝撃)】「天才えりちゃん金魚を食べた」「部屋とYシャツと私」
【題名自体が物語である】「脳手術の失敗」「お勢登場」「海へ出るつもりじゃなかった」
【濁音と意味不明な単語】「しだらでん」「少年アシベ」「ディグダグ」
【アルファベット混じりの題名】「D坂の殺人事件」「M色のS景」
【古めかしい言い方で】「ツァラトストラかく語りき」「されど孤にあらず」
【命令してみる】「大工よ、屋根の梁を高く上げよ」「メシ喰うな」
【パロディの題名】「長めのいい部屋」「百年の誤読」
【関係性をいわない】「隠し砦の三悪人」「11人いる!」
●第2章 マインド篇 
【先入観から逸脱する】「淋しいのはお前だけじゃな」「サーキットの娘」
【日本語+カタカナの題名】「少年ケニヤ」「三人ガリデブ」
【いいかけでやめてみる】「光ってみえるもの、あれは」「飼い犬が手を噛むので」
【いいきってしまう】「これからはあるくのだ」「幸せではないが、もういい」
【長い題名】「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」「おそうじをおぼえたがらないリスのゲルランゲ」「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」
【題名同士が会話する】「今夜わかる」シリーズ「買ってみた。」「それが本当なら」
【洒落の題名】「屁で空中ウクライナ」「ザ・先生ション!」
【人気歌人に学ぶ】「どうして長嶋有さんは枡野浩一なんかとつきあってるの?」「日本ゴロン」「世界音痴」「にょっ記」

最近、ちょっとした「言葉」に引っかかる人が気になる。
そこからいろいろな方向に話を掘り下げて、
予想もつかない結論に結び付いたり、
あれこれと思索を巡らせるのも楽しい。
ブルボン小林という人の芥川賞作家ではなく、
そういうマニアックなこだわり部分がたまらない。

「題名」一つを取り上げて、
その言葉の選び方や言葉のかかり方、
受け取る側の印象の違いや、
「もしこういう題名だったら」という並び替え、
非常に高尚なお遊びである。
「三人ガリデブ」などは、
昔から奇妙な題名だと思っていたから、
「ほかに適切な訳語はなかったのか?」と思っていたり、
そうかと思えばいきなりぶち込まれる、
「どうして長嶋有さんは枡野浩一なんかとつきあってるの?」
これは衝撃的だし思わず笑ってしまう。
その本を読んでいただけに、
その当時のことを思い出してなお笑えてくる。
そうかと思えば、
自分の短編集の題名を取り上げて、
「なぜこの題名にしたのか」の経緯を記してくる。
振り返ってみたら、
短編集の題名=その短編集の代表作くらいに思っていて、
その題名が決まるまでの経緯なと考えたこともなかった。
実用書偏となるとその面白さはさらに深くなり、
文学とは違う視点で題名を決めていく。
その過程がもはや「わからなくなってきました」状態。
最終的にはそういう時に編集が冷静に判断を下すのだろうが、
作家という当事者は案外「題名」に客観的になれない。
「売れたい」「売りたい」「手に取ってもらいたい」
そんな欲が願望が渦巻きすぎてしまう。

通常本屋の棚で、
私たちが目にするのは背表紙の題名。
平積みの本ならば装丁とそこに含まれる題名。
何となく題名で気になったら手に取って、
あらすじらしきものを確認して購入するかしないか、
読むか読まないかを決定する。
そう考えたら出版物の「題名」というのは大した価値だが、
案外その瞬間に忘れられていたりもする。

その「題名」にぐっとくる。
MJがその心をとらえられた時も「ぐっとくる」と表現するが、
この「ぐっとくる」という言葉は秀逸な題名ではないか。
とりあえず端的に内容を表していてかつ魅力的。
この本を電子書籍で買って読んだんだから、
ともかくこの本の題名、
ブルボン小林の勝利である。

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